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「これは殺られる!」全速力で走り出したが…
「とにかく見たとたん『でかい!』と思ったね。ツキノワグマのマックスサイズ。そして頭だけが茶色だった」
目が合い、数秒間睨み合った瞬間「これは殺られる!」と思い、湊屋さんは本能的に体を反転させて全速力で走り出した。
「クマに遭ったら背中を向けて逃げてはいけないことは、知識として知ってはいたけどさ、あれは絶対無理だって」
顔を執拗に攻撃されて血まみれに
敷石の上を直線で逃げた湊屋さんに対し、クマは唸りながら脇の草むらに入り、カーブを描くようにして湊屋さんを追い抜き、左斜め前から襲いかかってきた。そのときの状況は、病院から退院したあとに現場を見たとき、草むらがなぎ倒され跡がついていたことでわかった。
「とにかく足が速いのさ。気づいたら押し倒されていて、左腕は自分の下敷きになっていて動かせない。顔を攻撃してくるクマに対して右腕で必死に防御したさ。
クマは腕の隙間から執拗に顔を狙ってきたね。とにかく顔をやられないように、反対側へ反対側へと顔を背けるのに必死だった。どのぐらいやりあっていたかはよく覚えていないね」
ふと攻撃が止んだ隙に作業場へと走り、店舗側にいた奥さんに「救急車!」と叫ぶ。奥さんはその声を聞いた覚えはないが、血だらけになった夫の姿を見て、反射的に119番通報をしたという。
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