「損得の問題ではない」考えつく限りの激烈な対応に
やはり、中国勤務の経験がある米国務省元幹部のC氏は「中国は外交政策をとる際、三つの要素を検討する」と語る。それは、「中国の国内世論が反発するのか」「中国の国際的イメージを損なうのか」「核心的利益に該当するのか」の三つだという。今回は、三つの要素すべてに該当するため、中国は考えつく限りの激烈な対応に出るのは間違いないという。
B氏も「これは損得の問題ではない。観光客の出国制限や水産物の輸入制限で、日本にどのくらいの経済的な損害を与えられるかという問題ではなく、思いつく限りの怒りを最大限に表現することに集中するだろう」と指摘する。「中国世論もあるから、1か月や2か月で解決する問題ではない」(B氏)という。唯一、中国国内での反日デモについては、習近平政権に対するデモに変化する危険があるため、中国当局も扇動する真似はできないとの見方が専門家から出ている。
日中それぞれ国内で納得される“曖昧な解決”とは
日本では、中国の振る舞いに対する怒りの声も上がっている。B氏は「その気持ちはよくわかるし、首相答弁を撤回する必要もない」と語る一方、「中国をなめてはいけない」と語る。B氏によれば、米国が台湾独立を支持した瞬間、中国は米国との断交の道を選ぶ可能性が高いという。B氏は「日中が武力衝突の事態に至れば、中国は必ず核で恫喝してくる。日本の世論がそれでも団結を維持できるだろうか」と語る。
そのうえで、B氏は「事ここに至った以上、外交で解決するしかない」と話す。それは、中国が国内に向けて「日本は高市首相答弁を撤回した」と説明でき、日本も国内に向けて「答弁を撤回していない」と説明できる曖昧な線で着地させることだという。もちろん、曖昧な解決を許してくれる程度に、世論が冷めたり、飽きたりしてくれる必要がある。あと数か月は緊張した状況管理が強いられる日々が続きそうだ。