高市早苗首相が11月7日の国会答弁で台湾有事と存立危機事態に言及して以降、日中関係が激しく燃えている。中国は答弁の撤回を求め、日本産水産物の輸入規制緩和措置を事実上中断した。中国人観光客や留学生の訪日自粛を呼びかけ、中央や地方レベルでの日中交流もストップ。

 過去、中国との外交に携わった日米韓の元外交官たちに今の状況について聞いてみた。

高市早苗首相 ©時事通信社

「我々はここまで怒っているんだ」と国内に見せつけている

 ここまでメディアやSNSで散々流れているのが、外務省の金井正彰アジア大洋州局長と中国の劉勁松・外交部アジア局長が18日に協議したときの映像と写真だ。中国国営中央テレビは、劉氏が両手をポケットに入れたまま話す映像を流した。現役時代、対中外交に携わった韓国の元外交官A氏は「中国の国内向けの世論戦。我々はここまで怒っているんだと、中国国内に見せつけている」と語る。

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 A氏によると、両手をポケットに突っ込んだ姿はもちろん外交儀礼に外れる行為だが、それ以外にも注意すべきポイントがいくつもあるという。

 まず、劉氏の人民服姿だ。A氏は「人民服は中国共産党員でなければ着用できない。中国人民の気持ちを一つにして伝えるときに着用する」と説明する。劉氏の左胸に光っていたのは中国共産党の党員バッジだ。もちろん、普段はバッジをつけることはない。1998年11月、国賓として来日した江沢民国家主席が黒い人民服姿で宮中晩さん会に現れ、「痛ましい歴史の教訓を永遠にくみ取らなければならない」と主張したこともある。