天野 私は日頃パートナーと感情をダイレクトにぶつけ合うことが多いのですが、だからこそ離婚せずにどうにかやってこられてるのかもな、と(笑)。そこに気づいたので、脚本に反映させました。
後半、サチとタモツのすれ違いが多くなるにつれて、“言えない”コミュニケーションが増えてきて、お互いに“言いたい”ことが溜まっていく、という岸井さんのアイデアを、そのまま使わせてもらいました。
岸井 ケンカできるうちは、やっぱり健全なんだと思います。私はどちらかというと“タモツ側”の人間で、感情を飲み込んでしまうので、相手に不満があってもすぐに言い返せないんです。今の嫌だったな、と思っても、「何か嫌だったな。でも……」で終わってしまいます。それが、サチだと「今の嫌だったんだけど」と相手にちゃんと言い返せる。そんなパワフルで、私にはない強さを持ったキャラクターに、大きな魅力を感じました。
岸井「好きな人と相撲を取るのが夢」
天野 岸井さんのアイデアでもうひとつ覚えているのが、映画後半でタモツとサチがふたりで保育園に謝りに行くシーンです。最初の脚本では、保育園の先生の前でふたりが言い争いになるシーンでしたが、岸井さんが「サチが保育園の先生に対してだけ話していたら嫌な感じじゃないですか」とアイデアを出してくださったんですよね。
岸井 そうそう、タモツが無視されるシーンになったところですよね。
天野 サチの「嫌な感じだけれど、社会人としてはすごくまっとう」みたいなところも、タモツの「言っていることは正論なんだけれど、社会で生きていくのは下手そう」という感じも両方出せて、すごくいいシーンが撮れました。
岸井 私はサチに憧れがあるんです。サチみたいにパワフルで、相手にはっきり自分の言いたいことを言えるようになりたい。そして、好きな人と相撲を取りたいという夢があるので、気持ちが入ってしまいました。
天野 相撲?
岸井 はい。相撲を取るくらい、パワフルにぶつかり合うケンカをしてみたいという夢がずっとあるんです。実際は矢印が内側に向いているので、相手に言いたいことのひとつも言えないのですが、だからこそ、思う存分自分の憧れを「サチ」に託して表現することができたのだと思います。


