大学で出会った、佐藤サチ(岸井ゆきの)と佐藤タモツ(宮沢氷魚)。映画『佐藤さんと佐藤さん』は、同じ苗字のふたりが恋愛をして結婚。子を育て、そして別れるまでの15年を描いた物語だ。主演の岸井ゆきのと天野千尋監督に、岸井が演じたサチという人物をどう立ち上げていったのかを聞いた。(全2回の1回目/2回目を読む)
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「ずっと狙っていたんです」
──本作は、感情をぶつけるサチと感情を抱え込むタモツの対比が、夫婦のすれ違いの原点となっています。天野監督は、サチに起用した岸井さんとは、初めてご一緒に仕事をされたそうですね。
天野千尋監督(以下、天野) 今回、芯が強くてバイタリティがある印象が主人公・佐藤サチの生き方にぴったりだと思ってオファーしました。もともと、岸井さんがご出演された作品をたくさん観ていて、「いつかご一緒したい」と、ずっと狙っていたんです(笑)。
岸井ゆきのさん(以下、岸井) 狙って……!?
天野 多分最初に拝見したのは、『おじいちゃん、死んじゃったって。』(17年)だと思うんですけど、細かい感情表現がとても豊かな方だなとその時から注目していました。はっきり説明できない感情表現がすごくお上手で。微妙な表情、何でもない時の立ち居振る舞いや佇まいにインパクトがあって、絶対にどこかでご一緒したいと思っていたので、念願が叶い嬉しいです。
岸井 ありがとうございます。私は天野監督にお声がけいただいて、「『ミセス・ノイズィ』の監督だ」と喜んだのを覚えています。
それに、脚本を読ませていただいたら、すごくドラマチックで面白い作品だったんです。天野監督ご自身もすごくパワフルな方で、「この監督についていって、サチをつくろう」と思えたので、ぜひやらせてくださいとお引き受けしました。
感情をぶつけられるのは健全
天野 私は岸井さんに初めてお目にかかった時に、「タモツとサチが、ちゃんと感情をぶつけあっているんですね」と言われてハッとしたのを、すごくよく覚えています。
岸井 相手に感情をぶつけられるって、ある意味健全ですよね。気持ちをぶつけ合うケンカはもちろんあっていいと思います。脚本を読んでいて、「言いたいけど言えない」みたいな状況が後半で出てくるんじゃないかと思ったんです。

