岸井ゆきの・宮沢氷魚のいい距離感

天野 初対面の時に、実際の岸井さんが“タモツ側”だというのは、うかがっていましたが、映画の中の岸井さんは、小さな動きひとつに至るまで、すべてがサチそのものを生きていました。そのうえ、岸井さんは芯がある人だとは思っていましたが、実際に目の前で演技を拝見したら、芯があるどころか、「芯が動いている!」と思ったくらい、全部芯でした(笑)。

──最初にイメージされていたのは、ここまでパワフルなサチではなかったのですか?

天野 もちろん、アクティブで元気な人、というのは想定していましたが、もう少しふわっとしたイメージでした。タモツは宮沢(氷魚)さんが演じてくれたことで、より誠実なイメージが強まりましたが、そのタモツに対して岸井さんのズシッと響くサチが来てくれたことで、さらにいい距離感が保てたと思います。

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 もちろん、サチには「もうちょっとタモツのこと、見てあげてよ」と、思うところもありますが。

©2025『佐藤さんと佐藤さん』 製作委員会

苦いけれど悪くはない結末

岸井 私は完成した映画を観て、エンドロールで「タモツごめんね」って思いました。ふたりの15年間に、サチの力強さや強引さは必要だったとは思いますが、サチとして生きた15年を振り返ってみた時に、自然と「ごめんね」という言葉が出てきたんです。

天野 でも、結末はバッドエンドではないですよね。ハッピーエンドではないかもしれないけれど、人生はそもそも出会いと別れが続いていくものですし、これからもサチとタモツは一緒に子育てをしていくパートナーとしてつながっていくので、「これで終わり」ということにはならない気がします。

岸井ゆきのさん ©石川啓次(文藝春秋)

岸井 苦いけれど、悪くはない。いい結末だと思います。観客の方がどうご覧になるのか、聞いてみたいですね。

丸山 晃=スタイリング
茂木美鈴=ヘアメイク

衣装協力:
ジャンプスーツ:ジョルジオ アルマーニ、ピアス・リング:アーカー、その他:スタイリスト私物

©2025『佐藤さんと佐藤さん』 製作委員会

『佐藤さんと佐藤さん』

監督:天野千尋/脚本:熊谷まどか、天野千尋/出演:岸井ゆきの、宮沢氷魚
藤原さくら、三浦獠太、田村健太郎、前原滉、山本浩司、八木亜希子、中島歩
佐々木希、田島令子、ベンガル/配給:ポニーキャニオン/©2025『佐藤さんと佐藤さん』 製作委員会/11月28日(金)全国公開

次の記事に続く 「ワンオペ育児のさなかに感じた、社会から切り離されたような孤独からこの映画は生まれました」映画『佐藤さんと佐藤さん』岸井ゆきの×天野千尋監督対談