「彼が全裸でこっちを見ていたんです」
自己肯定感を高めるタトゥーが原因で、介護職に就けないジレンマ。それを知ってか知らずか、木村はやがて自身のインスタグラムを削除した。最後に馴染みのタトゥースタジオを訪れたのが、バイオハザードのマークを所望した、冒頭の8月最後の日である。
「マークの横に数字の0を4つ彫ってほしいと。意味は分かりませんが、同じデザインは以前も彫りました。昨年、仕事を辞めて以降、肘の内側などに『00』や『ZERO』という文字を何度も。根は優しそうだったし、あんな事件を起こすとは思いませんでしたが、最後の方は、ボーっとしていて、ちょっと会話もおかしかった。帰り際もあまり目を合わせてくれなかった」(前出・タトゥースタジオのスタッフ)
木村は、身体に刻んだマークやゼロの文字に、どんな意味を込めようとしたのか。一方、自宅アパートで木村の異様な行動が目撃されたのは、事件の2週間ほど前のことだった。アパートの住民が明かす。
「夜、車で帰宅すると、部屋にいる彼が白いカーテンを開け、こちらを覗くように見てくるんですよ。何かを警戒するかのように。9月の中旬頃、彼が全裸でこっちを見ていたんです。部屋の明かりが逆光になって表情はよく見えなかったんですが。その部屋は、今年の夏頃からガスが止められていました」
木村の祖父が、憔悴した様子で声を絞り出す。
「成長してからは頻繁に会っているわけではありませんので。彼が何を考えて、どうしてこうなってしまったのか、私にも全然分からないんです。何が悪かったのか、私たちがどうすればよかったか、まだ状況も掴めておらず、申し訳ないのですが、今お話しできることはありません」
か弱き2人の高齢者に向けられた理不尽な殺意。その解明はこれからだ。
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