今年8月31日、埼玉県北部のあるタトゥースタジオ。日焼けした男は「左の肩甲骨付近に彫ってほしい」と、準備してきたデザイン画を、馴染みの彫り師に見せた。生物兵器や感染性廃棄物に関わる“バイオハザード”のシンボルマークだった。上には「RAVEN」の英字も。直訳は大型のカラス、転じて不吉の前兆を意味する言葉だ。
それらを背に彫り入れたひと月半後――、男は卑劣な殺人者に成り果てた。
現場は埼玉県鶴ヶ島市の介護付有料老人ホーム「若葉ナーシングホーム」。
10月15日の未明、施設内に侵入した木村斗哉容疑者(22)は、5階入室の小林登志子さん、4階入室の上井アキ子さん(ともに89)を次々と殺害した。(全2回の1回目/続きを読む)
「2人の死因は、首を圧迫されたことによる窒息とみられる。さらに木村は、持ってきた鞘付きのナイフで、すでに絶命していた2人の上半身を切りつけていた」(社会部記者)
木村容疑者は同施設に勤務した元職員だった
木村は2023年5月から24年7月まで、同施設に勤務した元職員だった。
「職員用出入口の電子ロックを解除して中に侵入。結果として、木村の退職後も暗証番号を変えていなかったことがアダに。木村は着替え等も準備して犯行に及んだものの、なぜか逃走せず、6時間ほど現場の近くに留まり、同日の午前9時前、あっさり警察官に身柄を確保された」(同前)
その際、木村の所持金はゼロ。熊谷市の自宅アパートから、走行距離にして30キロ弱の道のりを自転車で移動し、元職場に辿り着いていた。不可解なのが肝心の犯行動機だ。元職員の木村は小林さんと上井さんを知っていたが「2人に恨みはなかった」と供述。捜査関係者が打ち明ける。
