10月15日未明、埼玉県鶴ヶ島市の介護付き有料老人ホーム「若葉ナーシングホーム」に侵入した木村斗哉容疑者(22)は、5階に入居していた小林登志子さんと、4階に入居していた上井アキ子さん(いずれも89)を次々と殺害した。
取材を進めると、木村容疑者が犯行の約1か月半前、背中に生物兵器や感染性廃棄物を象徴する“バイオハザード”のシンボルマークを彫っていた事実も判明した。同老人ホームの元職員だった木村容疑者は、なぜ卑劣な殺人者へと変貌していったのか――。(全2回の2回目/最初から読む)
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早くに木村の“異変”を察知したタトゥースタジオのスタッフ
元職場を舞台に木村が事件を起こすのは、退職から約1年3カ月後のことだ。
逮捕の翌日、送検される際の車両の中で、マスク姿の木村は目を瞑り、深くうなだれていた。取り巻く報道陣のカメラが、木村の右耳の裏にある薔薇、左耳の裏にある兎耳の髑髏のタトゥーを浮かび上がらせる。
「在職中も、二の腕に彫った入れ墨を見せびらかして周囲をドン引きさせたことがありました」(同前)
早くに木村の“異変”を察知したのが、これらの入れ墨を施したタトゥースタジオのスタッフだった。
「彼が来るようになったのはここ2年くらいです。上半身に12、3カ所のタトゥーを入れました。背中には天使の羽、両腕はスカルと花、蜘蛛と花が対になっている柄など。タトゥーが好きな元気な子。最初の頃はタトゥーを入れるとテンションが上がり、はしゃいでいました。様子がちょっとおかしくなったのは、今年に入ってからだったと思います。声のトーンが落ちて、暗い感じになって」
前後して、木村は再び介護職に就こうとしていた形跡がある。だが、熊谷市内の介護関係者はこう語る。
「その人(木村)が知り合いの老人ホームの職員に応募してきたんだけど、言動がおかしかったし、首元に入れ墨が見えたので、面接で落としたそうです。高齢者は入れ墨を嫌がる。基本的に見える位置に入っているのはアウトなんです」
