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相手がフジロックでの武勇伝を喋りたいなら……

 結局、相手に話を聴いてもらうには相手に話を聴いてもらいやすい態勢を作って雰囲気をキープしたうえで、主語と述語を可能な限り近づけて要望をはっきりと伝えるしか方法はないのかもしれません。相手がフジロックでの武勇伝を喋りたそうなら、興味ありげに話を聴いてみる、存分に話を聴いたうえで、連絡事や要望や相談内容をうまく繋いで話すしかないんじゃないかと思うんですよ。

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 集団内のグルーミングのような話題で「この人はどういう人なのか?」という理解が進むこともまた大事なんですが、人間、意外と「誰に何を話したのか」を忘れることが多くて、会うたびにフジロックの話をしてくるクズもまた多いのです。その話前も聴いたよ。てめえ忘れてんじゃねーよ。

 もちろん、喋る内容だけに限定すれば、こそあど言葉のような指示代名詞を使わないようにしましょうとか、相手が理解できそうな話のペースに抑えましょうとか、テクニック的なものはたくさんあります。でも、なんだかんだ最終的にはこちらの話を1伝えようとすると、相手の話を2か3か、場合によってはフジロックを5倍6倍聴かないとうまく伝わらないのです。お前の好きなアーティストがフジロックのステージ上でジャムってた話とか興味ねえんだよ。でも、そこはグッと我慢して自分の喋るターンを待つ。言いたいことを全部喋って、相手がすっかり気持ちよくなったところで自分のターンが来たら、必要なことをなるだけ簡潔に喋る。

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コミュニケーションって、つまりは我慢だと思うんですよ

 コミュニケーションって、つまりは我慢だと思うんですよ。黙って相手の言うことを聞く時間を作る。頑張って相手が喋りたくなるような相槌を打ち、沈黙を作らずにラリーをする。言いたいことを直接言うと相手が嫌な思いをするので、なるだけきちんとオブラートに包む。相手が理解できそうなレベルやペースで喋るよう心掛ける。伝えたいことはなるだけ頭の中で整理して、分かりやすい構文で伝える。相手の反応から、自分の言ったことの理解度を推し量り、足り無そうならもっと具体的に、あるいは抽象的に、または目的や意図を適切に説明し直す。

 上司と部下や、クライアントと下請けの関係でも、何だか良く分からない指示、曖昧な状況説明、理解しがたい目的や意図、フジロック苦労話ほか繰り返される話の脱線など、世の中にはストレスの多いコミュニケーションが満ちているように感じます。そんなに好きならフジロック会場の近くに住めよ。そういうコミュニケーションの方法がどんどん洗練されていって、無駄に喋る必要が無くなるといいなと思います。この原稿だって、要約すれば3行ぐらいで終わる話を3,000字も書くんですよ。内容に共感していただいて、分かりやすく最後まで目を通してもらえるように。

 結論としましては、フジロックなど、自分の趣味の話を他人に押し付けるのはやめましょうという内容でした。ご精読賜りありがとうございました。

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