いまだに「途方に暮れる人間関係」
それでも、好きな芸人がフジロック好きだとなれば、きっと私もそれ聴いて笑っているでしょうから、つまりは話を聴いてもらう雰囲気づくりってとても大事だと思うんですよね。
とはいえ、日常生活において「ああ、明らかにこの人は他のことに関心を持っているな」「興味がなさそうだな」という人にも、ビジネスや地域の仕事や介護や教育などあらゆる場面で話を聴いてもらわなければならないという事態に陥ります。あるいは、駅でばったり会ってしまった取引先としばらく同じ電車に乗って会話を繋がなければならないとき。町内会で、初対面の独居老人宅に訪問して家族や健康状態を聞き出さなければならないとき。顔見知りの児童福祉司に恃まれて近所の児童虐待宅に同伴訪問したとき。あまり親しくない人たちが集まるパーティーで壁の花になりそうなとき。
気まずいんですよね。なんというか、沈黙が辛い。誰かが何かを喋っていなければ「間」がもたないぞというときに、手ごろな言葉を吐き出す技術が必要だ。相手のことを知らなければならない、それ以上に自分のことを相手に知ってもらい、信頼するまでは無理にでも安心してもらう必要があるとき、私たちはどうすれば良いのでしょうか。45年生きてきましたが、いまだに「途方に暮れる人間関係」ってのはたくさんあります。全部断ち切れば楽なんだろうけど、世の中そんなに割り切れるものでもない。苦労しながら、一歩一歩前に進んであれこれ話してみるしか方法はきっとないのです。
具体的に伝えるか、結論から先に言うか
知らない人と打ち解ける会話ができることも技術なら、相手に分かりやすい言葉を発するのもまた、工夫でどうにかなるものなんでしょうか。当方に関心のない相手に「こちらの話を聞いてもらう」「理解してもらう」「行動してくれるよう約束を取り付ける」といった、要求レベルごとの話を考えなければならんのです。面倒くせえ。面倒くせえけどよく考えたらコミュニケーションってだいたいすべてがこんなことの繰り返しなんですよね。面倒くせえ。
簡潔に話すと聞き流される、長く話すとダルがられる、相手の様子を見ながら抽象的な話をするのか、具体的に伝えるのか、結論から先に言うか、経緯を丁寧に説明するか、いろんなパターンがあるかと思うんです。でも、おばさん相手だと最初に「今日も暑いですね」とか「奥さん、最近具合はどうですか」などという前置きをしなければならない。しかしこれが地雷となって、おばさん発の暑い関連トークを10分以上聴かされることもある。仕方なく、相槌打って聞く。そのあと、伝えるべき話を気持ちよく聞いてもらうために。