でもそれは、努力だけでなんとかなる問題ではありません。私が見る限り、最期まで「住み慣れた家」で過ごせる人は、よほど運がいいか、子どもが負担を背負ってくれている人です。
私たちはもうそろそろ、「住み慣れた家信仰」を手放してもいい時期です。年齢に応じた住まい方を、あらためて考えてもいいのではないでしょうか。
<在宅に潜むこんな問題>
・家の構造や交通の利便性が、年齢に合わなくなる
・急な病気やケガのときに発見が遅れるかも
・家族以外の人とのかかわりが減少する
・要介護になると家族の負担が急激に増える
施設探しは親が元気なうちに
Q.元気なうちに施設を検討するメリットは?
A.あわてて探すと、人気のない施設を選ぶことに
多くの場合、施設探しを始めるのは「もう在宅介護は無理!」という状態になってからでしょう。でもその段階ではゆっくり探す余裕はありません。
予算の範囲内で、すぐに入居できる施設の中から選ぶことになります。それはつまり「高い」か「人気がない」かのどちらか。
高すぎる施設は論外でも、施設が古い、交通の便が悪い、評判がイマイチ……くらいなら「背に腹は代えられない」と入居に踏み切るかもしれません。でもそれが、入居者のQOLを著しく下げる原因になることもあるのです。
ちなみに私は、30代の終わりからのべ300回以上高齢者施設の見学をしています。ファイナンシャルプランナーという仕事柄、高齢期の住まいについて知っておく必要がある……というのはもちろんですが、自分の老後のためでもあります。
要介護になるのはまだ先のはずですが、「認知症になったらこの施設」「嚥下状態が悪くなったらこの施設」と自分の入居先候補を決め、家族にも伝えています。
その施設であれば、自分の予算の範囲内でもっとも快適に過ごせると確信しているからです。それに、同じ施設であっても、自分の意思でそこを選んで入居している人は満足感が高いものです。逆に「家族に無理やり入居させられた」と思っている人は、不満ばかり。
