初対面で…藤田氏から南場氏に告げた一言
南場 DeNAを立ち上げてすぐの頃、起業の先輩だった藤田さんが突然うちの会社に遊びに来て。色々話してその場で「じゃあ株買います」って仰った。
藤田 そうでした。そんな失礼なこと……。でも当時からスター企業でプラチナ株だったんです。色んなスタートアップが乱立していた時代で、マッキンゼー出身の南場さんたちのようなエリート集団がうまくいくケースは少なかった。その中で「アンラーニング(知識やスキル、価値観を意図的に手放すこと)」という言葉を使って、泥臭くやっていたのを覚えています。
南場 そこを意識しないとね。コンサルは賢くみられてなんぼみたいなところがありますが、それって商売だと1円にもならないので。当時、渋谷はビットバレーと呼ばれて。孫(正義)さんなんかあの時からヘリコプターに乗ってたよね。
アプリの花が咲く時代が来る
藤田 過去の成功パターンをトレースするのは好きじゃないですけど、あの時代、最初にネットに投資して稼いでいたのが孫さんで、今も真っ先に「これからはAIだ」と言って利益を生み出している。ネットもそうだったんですが、プラットフォームとかインフラとか、特定のアプリケーションが生まれる前の土台の段階から投資する。その動きが速いのが凄いところです。
南場 スケール則(大規模化するほど性能が向上)によるAIの開発競争は相当オーバーヒートしていて、ビッグテック4社だけでインフラ投資額は年約60兆円ペース。そこに参戦できる日本の会社ってソフトバンク以外にないですよね。
藤田 体力があっても、孫さんみたいな強力なリーダーがいないと決断できない。けど、孫さんの次は南場さんじゃないですか?
南場 孫さんとはちょっと戦い方が違うんです。インフラレベルでの大きな戦いがあるとして、でも私たちのような規模の会社にもチャンスはあります。例えばアプリケーション。プラットフォームができたら、彼らは消費者だけではなくて、アプリケーションプロバイダからも効率的に資金を回収しないといけない。私は直感ではなく、勝つ確率とリターンの大きさ、つまり「期待値」で経営判断をしますが、この先、絶対にアプリの花が咲く時代が来ると思っています。
藤田 ネットの時も一拍遅れてアプリの時代が来ていたので、AIでも同じような現象が起きますよね。
南場 ただ、AIの変化は……(つづく)
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後編では、AI投資や人材育成術について、両者のリアルな考えを紹介。さらに、トップ経営者同士で語り合った“絶対やりたい意外なこと”など、この記事の全文は、「週刊文春 電子版」で公開中だ。

