サイバーエージェント創業者の藤田晋氏が12月12日付で社長を退き、会長に就任した。新刊『勝負眼 「押し引き」を見極める思考と技術』も累計7万部(電子書籍含む)を突破するなど話題を集め続けている。

「週刊文春」の好評連載「リーチ・ツモ・ドラ1」では社長退任を前に、ディー・エヌ―・エー(DeNA)会長の南場智子氏と対談。AI投資、人材育成術から、社長の引継ぎ、絶対やりたい意外なことまで存分に語り合った。対談を一部抜粋して配信する(11月27日号に掲載。全文は「週刊文春 電子版」にて公開中)。(全2回の2回目/はじめから読む)

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藤田晋氏(以下、藤田) ネットの時も一拍遅れてアプリの時代が来ていたので、AIでも同じような現象が起きますよね。

南場智子氏(以下、南場) ただ、AIの変化は本当に速い。どうしようと思うぐらい毎日新しい情報が出てきます。実は今年の8月と9月、風邪をこじらせ、とてつもない倦怠感が続きました。階段も登れず、2カ月間好奇心というものが消え、ニュースも一切フォローしなかった。社内でも「南場さん、大丈夫なのか」となったようだけど、なぜか9月23日に突然、ドラを鳴らしたようにシャキーンって治ったんです。それから情報を見始めたら「ヤバい。世の中こんなに変わってるんだ」って。

「DeNAはAIにオールインします」と打ち出す南場氏 ©文藝春秋

藤田 2カ月だけで。

南場 そう。生成AIの新しいモデルが次々出て、まさに浦島太郎状態でした。インターネットが登場した以来の変化の大きさかもしれない。それこそ、AGI(汎用人工知能)も5年以内で到来すると思いますよ。だから、私はAIにとっても興奮しています。

――それだけ変化が速い業界にあって、どのように人材を育成していますか。

サイバーエージェントとDeNA、違いと共通点は?

南場 うちの会社はよく“知的体育会”と言われるんです。外から見たらロジカルモンスターみたいな印象が強いみたい。

藤田 分かります。以前DeNAのインターンの審査員をした時、課題が「営業利益100億円の事業を考えよう」だったんですけど、本当にロジカルに作らせるんです。東大生が1週間徹夜でやって「実現性が足りない」って怒られて打ちのめされる。サイバーエージェントとDeNA両方受けた学生が「全然違うんですね」とよく言うんですよ。うちは真逆。ザックリいけそう、本人もやる気がある、でゴーサインが出る。ロジカルでインテリジェンスなDeNAと、勢いで乗り切ろうとする弊社って感じです。

南場 でも、若くても色んなことを任せる社風は似てますよね。うちは「ストレッチアサイン(現状の能力より困難で挑戦的な業務を意図的に任せること)」が重要だと言っています。

藤田 ストレッチアサインという言葉は南場さんから初めて聞いたんですが、うちの会社も同じですね。