「失敗のほとんどは社員の能力不足が原因なわけじゃない」
南場 「夢中になって仕事をする」というのが一番大事なので、タスクを無茶ぶりするだけじゃなくて、責任も一緒に無茶ぶりします。オーナーシップを持つことで仕事はぐっと面白くなるし、成功率も高くなる。SC相模原(J3)を買った時も、うちの社員がどうしてもサッカーをやりたいというので、買い物かごを渡して「できるだけ神奈川で買ってきてね」と言って。まだ成功していないですが。
藤田 サッカー経営の難易度は非常に高い。オーナー企業によるスポンサー費用負担の割合も大きいですし。
南場 でも、失敗するにしても、その失敗の仕方は見ています。成功って運も必要だから、失敗のほとんどは社員の能力不足が原因なわけじゃない。失敗した場合は仕事のプロセスを見て、逆に裁量と責任を更に大きくすることもあります。社員からすればもっと頑張るしかない。よく「球の表面積」と言っていますが、ピラミッド型ではなく、新入社員もベテラン社員もそれぞれにオーナーシップを持ってもらいたいんです。
藤田 ネット業界をずっとやってると、挑戦しなかった代償を意識します。失敗してもとりあえずやっておく。DeNAも幾つも事業を立ち上げて今に至っていますもんね。もう誰もオークションの会社だと思ってないんじゃないですか?
南場 もともとオンラインオークション「ビッダーズ」のサービスを始めて、「モバオク(携帯電話専用のオークションサイト)」があって、モバイルゲーム、スポーツ、ヘルスケア、メディカル……。あと、横浜スタジアム横の旧市庁舎街区のスマートシティ開発もしていて、来年3月に街開きを予定しています。
藤田 現実世界の空間についに進出するわけですね。
南場 今まではサイバー空間だったから、土地の開発、空間の構築は初めてで。すっごく楽しいんです。
藤田 これだけ事業を展開していれば、普通に考えて何か当たるでしょう。
南場 株式市場からは、コングロマリットディスカウント(複合企業の企業価値が、個別事業の価値を合計した額よりも低く評価される現象)というメッセージもありますが、DeNAの強みは、やる気に溢れた才能ある人材が自分でオーナーシップを持って事業ができるプラットフォームであることなんです。
優秀な新卒が腕まくりをして夢中で仕事をする。中途採用も出戻りも結構多かったりして。今ある事業をオーナーシップを持って頑張る人もいれば、新しい事業を始める人もいる。それがうちの本業なんです。だから1個に絞りなさい、というのはちょっと軸とは違っていて。
