インド・マイソール州で発生した「人喰い熊事件」。ナマケグマが市街近くに出没し、住民を次々と襲撃。少なくとも12名が犠牲となり、顔がグチャグチャで判別不可能になった被害者も。

 もともと大人しい熊が、なぜ世界最悪の熊害を引き起こしたのか──その恐怖の一部始終を、宝島社によるムック本『アーバン熊の脅威』より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む

写真はイメージ ©getty

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死者12名! 世界最悪の熊害

「マイソールの人喰い熊事件」は、インド南西部マイソール州の市街近くに棲みついたナマケグマが次々と住民たちを襲い、少なくとも12名が犠牲になったという、記録に残る世界最大の熊害だ。

 ナマケグマは平均して体長160センチ前後、体重は120キロ程度とヒグマよりは小柄な種で、その名前の由来となったナマケモノのような長い爪を持つ。

 もともとはおとなしい性質で、熊使いに芸を仕込まれて見世物を披露したり、ペットとして飼われたりする例もある。だがマイソール事件の熊は、畑を荒らすなどを繰り返し、これを住民が追い返そうと小競り合いを重ねるうち、徐々に狂暴化していった。そして、ついに人を襲い始めるほどの状態になった。

 いつもは農具で殴りつければすごすごと退散していたはずの熊が、突如一変して、その長い爪で一人の農夫の顔面を切り裂いた。頬や眼球がケバブのように削られていったという。その姿に衝撃を受けた仲間たちは、すぐさまこれを救出しようと農具を振るって撃退を試みる。

写真はイメージ ©getty

 しかし熊はおかまいなしに暴れ続け、この最初の襲撃で少なくとも3人が亡くなったとされる。被害者たちはいずれも顔面を中心に襲われ、その死体が誰のものかを判別するのも困難なほどだったという。

次の記事に続く 恐怖に陥った住民たちは「熟練ハンター」に討伐を依頼⋯12人殺害「インド史上最悪の人喰い熊」の末路(海外の熊事件・昭和32年)