全世界での累計発行部数が1億冊を超える『北斗の拳』の原作者・武論尊さん(78)。中卒で自衛隊に入り、その後漫画原作者に転身すると数多くのヒット作を生み出してきた、まさに漫画界のレジェンド的存在だ。2026年に新作アニメ『北斗の拳 -FIST OF THE NORTH STAR-』の放映も決まっている。
近年は、4億円の私財を投じて長野県佐久市に建設した「さくまんが舎」で若手漫画家の育成に力を入れている。一方で現在は漫画原作者としてのオファーが来ないと話し、出版社への原作持ち込みを続けていると明かす。
「今はもう、待っててもオファーが来ないんだから、自分で持ち込むしかないでしょ。今のところぜんぜん使ってくれないけど、この年で原作を書いて、俺の能力が今の読者たちに通用するのかどうか、見てみたいんだよ。だから編集部に無理やり持ち込んでるんだ。またジジイが来たよ、イヤだなって言われてると思うけど(笑)」
「若いやつらには負けられない」若手に交じって自身も創作を続ける
武論尊さんは2018年に「武論尊100時間漫画塾」を開塾。佐久市内外から集まる塾生たちに、『名探偵コナン』の青山剛昌氏や『タッチ』のあだち充氏など、そうそうたる講師陣による指導を受けさせている。これまでに126名が受講し、30名がプロデビューを果たした(2025年12月現在)。
塾を開くきっかけとなった1つは、これまで共に作品を生み出した漫画家たちの苦悩を見てきたことだ。
「本当に不器用で真面目な漫画家さんが多いからね。俺の原作で書いた後、その漫画以上のものを自分で描こうとして、立ち止まっちゃう人もいるんですよ。それで病んでしまって、亡くなった人がふたりいます。自分の力で自由に描こうとすると、ピュアな思いが溢れちゃうんだよな。俺みたいに長く走れるように、濁しておけってよくいうんだけど」
驚くことに、武論尊さんは塾生たちに出される課題を、自身も毎回提出している。「若いやつらには負けられない」という負けん気は健在だ。さらに「塾生を見てると自分もまだまだだと思うし、塾を始めて元気になったよね(笑)」と語る。
「一番怖いのは、腹上死」
佐久市で米農家の両親のもと末っ子として生まれ、貧しさから中卒で航空自衛隊に入隊。7年間の自衛隊生活を経て漫画原作者となり、『北斗の拳』や『サンクチュアリ』などの名作を世に送り出してきた。
2023年に完結した『Too BEAT』(作画・吉田史朗)を最後に新作を書いていないものの、現在も、次なる連載のために「ゴルフや競馬もの」「AV女優の話」「詐欺師の話」など、これまで手がけたことのないテーマに挑戦して原稿を編集部に持ち込んでいるという。80歳を間近に精力的に活動を続ける一方で「なにがあるかわからないから、先のこともぼちぼち考えないと」と話し、こう続ける。
「一番怖いのは、腹上死だよね。目指せ、腹上死。ガハハハッ」
強烈なバイタリティと豪快な笑いで周囲を魅了する武論尊さんの姿は、78歳とは思えない輝きを放っている。
武論尊さんが自衛隊時代に経験した壮絶な思い出や、『北斗の拳』の秘蔵エピソード、さらに一時期連載を続けられなくなるなどのスランプに陥った際のお話など、計2万文字弱に及ぶロングインタビューの全文は下記のURLよりお読みいただけます。

