サイバーエージェントの藤田晋氏が12月12日付で27年間務めた社長を退き、会長に就任した。安室奈美恵さんの引退に重ね合わせた「引き際の美学」を、発売1カ月弱で7万部突破(電子書籍との累計)のビジネス書『勝負眼 「押し引き」を見極める思考と技術』(文藝春秋)ダイジェスト版よりお届け。

「引退が決まってからの期間はビジネス的にもゴールデンタイム」

 2017年、安室奈美恵さんが1年後の引退を発表した時のことを藤田氏は鮮明に覚えている。安室さんのファイナルツアーを観に行った際、「とんでもない完成度のステージパフォーマンス、観客は溢れんばかりの熱気」に圧倒されたという。席の隣に座っていた安室さんの息子と思しき若者が友人から「お前の母ちゃんすげえな……」と言われていた光景が印象的だったと振り返る。

2018年9月をもって、引退した安室奈美恵さん ©getty

「表舞台からの去り際に、こんなカッコいい姿を子供に見せられたら、親としてもこの上なく幸せだろう」と藤田氏。そしてビジネス的な視点からも、「引退が決まってからの期間はビジネス的にもゴールデンタイム」だと気づいたという。安室さんの場合、ファイナルツアーのチケットもアルバムも飛ぶように売れ、広告契約もグッズ販売も「千載一遇の特需状態」だった。

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「多くのカリスマ創業社長と言われる人が、引き際に失敗して、晩節を汚している」

 藤田氏自身も2022年に「次期社長を2026年に誕生させる」「自分は会長に退く」と社内発表してから、「普段交流の少ない社員からは有り難がられる」など、リーダーとして仕事がやりやすくなったと実感。それと同時に、社長候補16名に対して丁寧な引き継ぎを行うなど、4年の準備期間を設けた理由も明かしている。

12月12日付で社長を退き、会長に就任 ©文藝春秋

「多くのカリスマ創業社長と言われる人が、引き際に失敗して、晩節を汚している」と藤田氏。だからこそ、安室奈美恵さんのように最後はカッコよく表舞台を去りたいと考えているのだ。「完全に自分が身を引くのはまだ先の話だけど、あの日観た安室奈美恵さんのように、最後はカッコよく表舞台を去りたいものである」と、引き際の美学について綴っている。

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