モモと脱走を試みたことも…無断帰国も考えたデビュー前
サナがK-POPの世界へと足を踏み入れたのは2012年、15歳の時。大阪の難波で買い物をしていた彼女に、韓国の大手芸能事務所JYPエンターテインメントのスカウトが声をかけたことから始まった。突然の出来事に「怪しい」と警戒するも、手渡されたチラシにJ.Y. Park(パク・ジニョン)の写真が載っていたのを見て「この人、知ってる!」と安心したと、後に明かしている。中学卒業後、たった一人で韓国へわたり、サナの“TWICE人生”が始まったのだった。
しかし、練習生としての生活は順風満帆ではなかったという。中でも有名なのが、練習生仲間だった日本人メンバーモモと本気で“脱走”を計画していたというエピソードだ。今でこそK-POP業界で活躍する日本人アーティスト、練習生は増えたものの、サナやモモの練習生時代は“完全にアウェイ”の酷な環境であったことは想像に難くない。
慣れない韓国語に生活様式の違い、ハードなレッスン……。思い詰めた2人は、夜中に誰にも知らせず日本へ帰ろうと、いかに音を立てずに荷物を持ち出すかまで真剣に考えていたという。最終的に実行できなかった理由は、彼女たちのパスポートを事務所が管理していたから。「現実的に不可能だった」と苦笑しながら韓国のバラエティ番組で披露されたこの話は、もし実行されていたらTWICEは7人組になっていたかもしれないという“笑い話”として、今も語り草となっている。
オーディション番組「SIXTEEN」で“スター性”を買われデビュー
その後、サナは現TWICEメンバーのナヨン、ジョンヨン、ジヒョらと共に「6MIX」という名前でデビュー準備をするものの、他のメンバーの退所や韓国内の情勢悪化で計画が白紙になるという悲運に見舞われる。それでも諦めず、2015年に放送されたJYPのオーディション番組「SIXTEEN」に参加し、デビューを勝ち取ることになるのだが、この「SIXTEEN」という番組もなかなか過酷なリアリティーショーであった。
当初JYPに所属していた練習生16名が“デビュー組”の座をかけて競い合うというもので、今振り返ってみると、参加者の豪華さに驚く。I.O.Iでデビューし今はソロで活動するチョン・ソミ、IZ*ONEメンバーとなったイ・チェヨン、ITZYとして活躍中のイ・チェリョン、fromis_9のメインボーカルとなったパク・ジウォン、そして2023年ついにKISS OF LIFEでデビューを果たしたNATTY。誰が選ばれてもおかしくないほど、多才なスターの卵たちが火花を散らしていたのである。
J.Y. Park主導のプロジェクトゆえ、ビジュアル、パフォーマンス力はもちろん、「スター性」という数値では測れない、人格を含めた指標が問われていたのも「SIXTEEN」の特徴だ。サナはダンスや歌の面においては圧倒的エースタイプではなかったものの、“スター性”があったのは確かだった。指摘を受けても必要以上に落ち込むことなくポジティブに受け止め、時には練習を怠った仲間をきちんと諭す。サナがTWICEメンバーに選ばれたのは、必然だったように思う。

