「このクルマはトヨタの『シエンタ』やホンダの『フリード』とほぼ同じ大きさです。日本のタクシー市場で高いシェアを持つトヨタの『ジャパンタクシー』の牙城を崩したいとの意気込みで開発しました」
実際に乗ってみると、大きなスーツケースを後部座席に置けるくらいの室内空間が確保されていた。タクシー市場では、「ジャパンタクシー」だけではなく、「シエンタ」「フリード」も増えているように見える。インバウンドで外国人観光客が増えたことで、室内空間が広く、スーツケースを2、3個載せられる車が求められているため、タクシーではセダンよりMPVが重宝されているようだ。
国内でEVのタクシーをほとんど見かけないが、その理由は単に日本メーカーがタクシー向けのEVを開発していないからだ。そこに着目した関氏はこう語る。
「燃料コストが安いタクシー向けEVについて、すでに日本から引き合いが来ている。『モデルA』は東南アジアやインドにも市場があるが、日本市場を最優先したい」
さらに、この「モデルA」は、将来的に無人運転となるロボットタクシーとしての利用も視野に入れて開発したという。実際、鴻海はライドシェアの米ウーバー、エヌビディアなどとロボタク分野で提携している。
そして、「モデルA」の最大の強みは、コスト力にある。関氏は「専用部品を使わないため、開発期間をかなり短縮できた。鴻海の強みはスピード力にもある。ハイブリッド車より安く販売しても利益が出る」と説明する。おそらく鴻海では新車開発が、1年程度でできるのではないか。既存自動車メーカーの2~3倍速いイメージだ。開発スピードが速ければ、投入工数が減り、コストが下がる。そのため自動車各社は、開発期間の短縮にしのぎを削っている。
追浜工場を分社化し、日産=鴻海の合弁案も
さらに関氏は「できれば、この『モデルA』を日本で造りたい。そのために色々と動いている」と明かした。
実は日産関係者によると、現在進めているリストラ計画により車両生産を中止する追浜工場(神奈川県横須賀市)を分社化し、日産と鴻海で合弁経営にする案が進んでいたという。同じ生産ラインで日産車と「モデルA」を混流生産し、稼働率を高める狙いもあったのだが、最終的には日産側が断わったようだ。
〈この続きでは、台湾企業との協業が国内自動車メーカーにもたらすメリットを分析しています〉
※本記事の全文(約3700字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています(井上久男「日本車メーカーの勝ち筋は“台湾協業”にあり」)。本記事の全文では下記の内容をお読みいただけます。
・急速な変化を遂げた鴻海
・米エヌビディア向けAIサーバー製造が主力
・鴻海と日本勢が組むメリットは?
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