「浅野忠信さんに影響を受けて…」

──涼のカメラ遣いなどは、まるでプロのようでした。

 ありがとうございます。実は、あれほど本格的なカメラを触ったのは初めてで(笑)。無意識でカメラを扱えるような、いわば“慣れた手つき”に見えるように、撮影前にカメラをお借りして、毎日撮って操作に慣れました。とにかく、「涼・恵として生きる」という、無意識の意識を大事にすることだけを考えていたので。

 

──「無意識の意識」とは、監督からのリクエストだったのでしょうか。

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 いえ、以前『湖の女たち』(24年)で共演させていただいた、浅野忠信さんの影響が大きいです。浅野さんは、どこから芝居が始まっているのかわからない“スイッチのない演技”をされる方で、その自然さに感動したんです。

 役を決め込みすぎず、自分の感情が動くままに任せるという芝居が自分には合っていると気付き、やってみようと思うようになりました。

©2025映画『楓』製作委員会

──福原遥さんとは、お二人で役作りについて話すこともあったそうですね。

「(福原さんが)あるシーンで悩んでいる」と聞いて、電話で本読みもしました。

 福原さんが迷いなく演じられれば、相手役である僕の芝居にもきっと良い影響があるだろう、という“打算”も少しありましたが(笑)、俳優同士だからわかりあえる部分もあったと思いますね。

©2025映画『楓』製作委員会

──最近は海外作品への出演も増えています。今後挑戦したいジャンルの映画はありますか?

 出演する作品のジャンルには、正直あまりこだわりはありません。ただ、海外作品でも日本の作品でも“役として生きる”ことは同じです。どの作品でもしっかり “生きられた”と思えるよう、これからも向き合っていきたいです。

 

深野未季=写真
菊池陽之介=スタイリング
永野あゆみ=ヘアメイク

衣装協力:マーカ、ジョンロブ、その他スタイリスト私物

ふくし・そうた 1993年、東京都生まれ。2011年俳優デビュー後、同年『仮面ライダーフォーゼ』でドラマ初主演。23年『THE HEAD』Season2で海外作品デビュー。アクターズ・ショート・フィルム4『イツキトミワ』(24年)では、監督にも初挑戦した。公開待機作に韓国ドラマ『恋の通訳、できますか?』(Netflix)、台湾映画『花臉猫:修羅道』(26年秋以降台湾にて公開予定)などがある。

INTRODUCTION

スピッツの楽曲「楓」を原案に、行定勲がメガホンをとった作品。「楓」は、スピッツの8枚目のアルバム『フェイクファー』(98年)に収録され、後にシングルカットされた名曲。主題歌にも採用されているが、劇中ではロックバンド SUPER BEAVER の渋谷龍太と、シンガーソングライター十明(トアカ)によるカバー版「楓」も印象的な場面で流れる。対照的な性格の双子の兄弟を演じる福士蒼汰の一人二役、そして芸歴20年を迎えた福原遥が見せる繊細な役づくりも大きな見どころ。

 

STORY

天文が趣味の須永恵(福士蒼汰)と恋人の木下亜子(福原遥)は、幸せな日々を送っていた。しかし亜子が一緒に暮らす恵の正体は、実は彼の双子の兄・涼だった。恵は1カ月前、ニュージーランドでの事故によりこの世を去っていたのだ。事故のショックで混乱している亜子を思い、弟のフリをして寄り添う涼。二重の生活に戸惑いながらも、明るくまっすぐな亜子に惹かれていき、やがて涼にとっても、亜子はかけがえのない存在になっていく。しかし亜子にもまた、涼に明かせない、ある“秘密”があった――。

 

STAFF & CAST

監督:行定勲/脚本:髙橋泉/原案・主題歌:スピッツ「楓」(Polydor Records)/出演:福士蒼汰、福原遥、宮沢氷魚、石井杏奈、宮近海斗、大塚寧々、加藤雅也/2025年/日本/120分/配給:東映、アスミック・エース/©2025映画『楓』製作委員会

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