エミン それは保守的な見方ですね。あと5年で8万円を超えるんじゃないでしょうか。私は、2050年までに日経平均が30万円を突破すると予想しています。

日経平均が30万円になる頃には…

杉村 エミンさんは新著『エブリシング・ヒストリーと地政学』で歴史や地政学によって経済を分析されていますが、日経平均の予想についても歴史や地政学の観点から見ていますか。

エミン ええ。過去の日本の株価を見ると、約40年間にわたって上がった後、23年間程度、調整に入るというサイクルがあるんです。具体的に言うと、1878年から約40年間上昇し、1920年頃から終戦に向けて調整に入った。終戦前後の株取引停止を経て49年に取引が再開すると、89年まで40年上がり続け、90年から2012年までは調整。この大きなサイクルに則ると、13年から日本経済は上昇サイクルに入っており、53年までは株価は上がり続けると予想できます。歴史に根ざした大局観を持つことが相場を読み解くうえでも非常に有効なんです。

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杉村 地政学的にはどうでしょうか。

エミン 米中新冷戦により、米国が中国からのデカップリング(経済分断)を進めることで、日本の地政学的な重要性は高まります。米国は日本を重要な戦略拠点と見なし、「日本を優遇するし、製品も買うから、どんどん生産して」となって日本にサプライチェーン回帰をもたらす。これは日本経済にとって強烈な追い風となるでしょう。

 

杉村 今後、株価が上がり続けるという見方は私も同じです。同時にこれは、インフレの進行を意味しています。日経平均が30万円になる頃には、コンビニのおにぎりが1個1000円になるでしょうね。

5万円札が生まれる

エミン そう、その頃には大卒の初任給は100万円を突破し、5万円札が生まれるでしょう。そして資産価格の上昇のスピードはインフレより速い。例えばここ5年間で物価は全体で2割程度の上昇ですが、東京23区内のマンション平均価格は2倍近くになっています。つまり通貨の価値が目減りし、購買力がどんどん減っているのです。これまで日本はバブル崩壊のトラウマから企業も個人も借金や消費を減らすというデフレマインドで生きてきた。しかし、今後はインフレマインドに切り替える必要があり、それに気づいて行動した人が資産の購買力を守れるのです。

杉村 銀行にお金を眠らせているだけの人と、積極的な資産形成をしている人では大きく差がつくということですね。結果、中間層が薄くなり、一部の富裕層と大半の貧困層という超格差社会が訪れてしまう。言葉を選ばずに言えば、「中間層でとどまり続けるためにも投資が必要」であり、株式の配当という“第二の所得”を得た方がいい。私は、生活費と1年以内に使う予定のお金以外は全て投資資金に回しています。

――では、投資の第一歩としてどのようにして銘柄を見つけるのでしょうか。

この続きでは、具体的な銘柄選び、投資法、指標や材料について2人が語り合っています。約7000字に及ぶ対談記事の全文は「週刊文春 電子版」および12月25日(木)発売の「週刊文春2026年1月1日・8日号」で読むことができる》

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