この先、日本は超インフレ社会に――。エコノミストのエミン・ユルマズ氏と投資家として大成功を収めている杉村太蔵氏が、未来を生き抜く投資戦略を明かす。
(エミン・ユルマズ/1980年、トルコ・イスタンブール出身。東京大学工学部卒業後、同大学院にて生命工学修士を取得。2006年野村證券に入社し、M&Aアドバイザリー業務に携わる。24年レディーバードキャピタルを設立。最新刊『エブリシング・ヒストリーと地政学』(文藝春秋刊)が続々重版!)
(すぎむらたいぞう/1979年、北海道旭川市出身。派遣社員、外資系証券会社勤務を経て2005年衆議院議員に最年少で当選。現在はコメンテーターのほか、講演活動でも活躍。独自の投資術やおすすめ銘柄を明かした『杉村太蔵の推し株「骨太」投資術』が文藝春秋より26年1月28日に発売。絶賛予約受付中!)
今の日経平均はバブルではない
――2025年10月末、日経平均が5万2千円台に乗り史上最高値を更新。しかし足元の生活実感とかけ離れていることから「バブルでは?」という見方もあるようです。
エミン 今の日経平均はバブルではなく実態の伴った適正な数字です。それはPER(株価収益率)を見れば分かる。PERとは株価が一株あたり純利益の何倍であるかを表し、現在の株価が利益に比べて割高か割安かを判断する指標です。バブル期は日経平均のPERは60倍でした。でも今はせいぜい18倍くらい。適正水準は16~18なので、極めて妥当な数字であると言えるのです。
杉村 同感です。バブル崩壊後、「失われた30年」と称されますが、失われたのは私たち個人の可処分所得であって、日本経済全体が失われたわけじゃない。実際に2000年代初頭から見ると、日本の企業全般(金融業、保険業を除く)の純利益は10兆から80兆に増え、実に8倍になっています。それなのに法人税収は50%程度しか増えていません。
エミン 一方で消費税収は増え続けていますね。
日経平均8万超えはいつ?
杉村 ええ。10兆円から25兆円と倍以上になっています。私は2005年に衆議院議員に当選したんですが、その頃「トリクルダウンを起こす」と盛んに叫ばれていました。これは、まず大企業を儲けさせ、次に中小企業、そして個人にまでシャンパンタワーのように富が滴り落ちるようにすること。そのために法人税率を下げることで国民の所得はどんどん上がると見込んで消費税を上げました。しかし、企業は内部留保の積み増しに走り、賃上げは実行されずトリクルダウンが起きなかった。これが株価のわりに景気の良さを感じられない理由なんです。
加えて高市政権は法人税を上げる気はなく、危機管理投資を行った企業を対象に減税するなど、さらに法人が儲けやすい環境を作ろうとしている。そういった要素もあり、企業業績が堅調なら日経平均は10年後には8万円を超えると私は見ています。
