彼女に現れた“変化の兆候”

──ロナの髪色の変化が、時制だけではなく彼女の感情や状態の変化を表しているのが印象的でした。

 エイミーはいつも、髪の毛から眉毛まで頻繁に色を変えて楽しんでいたようで、映画では本人が「マーメイド・パンク」と呼ぶライトブルーの髪色をロンドン時代のロナの髪色に選びました。オークニーに滞在するうち、ブルーが段々と抜けて本来の髪色に戻り、最後はオレンジ色に染め直します。それは、彼女が本来の自分――いろんな色に変えては楽しむ自分を受け入れた証でもあります。

©2024 The Outrun Film Ltd., WeydemannBros. Film GmbH, British Broadcasting Corporation and StudioCanal Film GmbH. All Rights Reserved.
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──ロナの母親が壁紙の色を選ぶ場面があるように、色への情熱が母娘の共通点と言えますね。

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 ロナはずっと父親と仲良しで母親とは距離があったけれど、過去を見つめ直すうち、実は自分たちはとても近い存在だと気づいていきます。そもそもこの家族はみな、現実逃避をし、自分だけの崇高な場所を必死で求めています。ロナはクラブのダンスフロアに救いを求め、母は信仰と教会に逃げ込む。そして双極性障害を患う父はときにその症状の中に閉じこもってしまう。実はとてもよく似た3人なんです。

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ノラ・フィングシャイト 1983年、ドイツ生まれ。長編劇映画デビュー作『システム・クラッシャー』(19年)でベルリン国際映画祭の銀熊賞(アルフレッド・バウアー賞)を受賞。ドイツ映画賞でも8部門を受賞し、2020年のアカデミー賞ドイツ代表作品に選出された。近作にNetflix映画『消えない罪』(21年)がある。

INTRODUCTION

原作は、エイミー・リプトロットによるベストセラー回想録『THE OUTRUN』。 断片的で混濁した主人公ロナの内面世界を、ノラ・フィングシャイト監督が繊細な演出で丹念に描き出し、英国インディペンデント映画賞で9部門、英国アカデミー賞で2部門にノミネートされるなど高い評価を受けている。『レディ・バード』(17年)『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(19年)などで知られるシアーシャ・ローナンの、成熟した深みと圧倒的な内面性をたたえた演技も見どころ。

 

STORY

ロンドンの大学院で生物学を学んでいた29歳のロナ(シアーシャ・ローナン)は10年ぶりにスコットランド・オークニー諸島の故郷へと帰ってくる。かつて大都会の喧騒の中で、自分を見失い、アルコールに逃げる日々を送っていた彼女は、ようやくその習慣から抜け出した。しかし、恋人との関係に亀裂を生み、数々のトラブルも引き起こした記憶の断片が、彼女を悩ませ続ける。ロナは逃れたい過去を抱きしめ、再び世界とつながることができるのか──。

 

STAFF & CAST

監督:ノラ・フィングシャイト/脚本:ノラ・フィングシャイト、エイミー・リプトロット/出演:シアーシャ・ローナン、パーパ・エッシードゥ、ナビル・エルーアハビ、イーズカ・ホイル、ローレン・ライル、サスキア・リーヴス、スティーヴン・ディレイン/2024年/イギリス・ドイツ/118分/配給:東映ビデオ/©2024 The Outrun Film Ltd., WeydemannBros. Film GmbH, British Broadcasting Corporation and StudioCanal Film GmbH. All Rights Reserved.

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