もともと過激な物語を欲している人びとに情報を与えている

 つまり、最近の調査によれば、エコーチェンバー現象の蔓延はこれまで誇張されすぎだったと示されたのである。

 もちろん、アルゴリズムによって過激な思想をたまたま目にしたことがきっかけで、過激な思想を信じるようになる人もいるにはいるだろう。しかしじつはそれも、結局はユーザーが選んだ思想だ。

 プラットフォームは人びとを過激にするのではなく、もともと過激な物語を欲している人びとに対して報酬としての情報を与えているだけなのである。過激な情報は彼らにとって「報われポイント」なのだ。

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ソーシャルメディアにやみつきになる理由とは…

 だが、社会的孤立が進む時代において、ソーシャルメディア・プラットフォームは私たちが自身を――そして互いを――理解するために使う最重要ツールのひとつになってきた。私たちがソーシャルメディアにやみつきなのは、目を引く派手なコンテンツが表示されたり気を散らすコンテンツが延々と流れたりするからではなく、私たち人間に生得的な行動、すなわち、さまざまなバージョンの自己を呈示しては、他人がどう思うかをうかがい、それに応じてアイデンティティーを手直しするという行動を手助けしてくれるからである。(クリス・ベイル『ソーシャルメディア・プリズム』)

 エコーチェンバーによって生まれる同様の思想をもった人びとの集団を、ベイルは「部族」と呼ぶ。政治的主張に基づく部族ということだ。

 これは昨今の日本語で表現するのであれば「界隈」と呼ぶことができるだろう。

 2024年のユーキャン新語・流行語大賞トップ10の一つに「界隈」というものがあった。たとえば「K-POP界隈」や「就活界隈」と言うと、K-POPを好きな人と、あるいは就活を熱心にしている人びと、といったように趣味嗜好や共通の関心でつながるコミュニティのことを意味する。要は、特定のジャンルや行動を好む人びとの集まりのことを指す語彙である。