1953年にテレビでの放送がスタートし、年末の風物詩となっていったNHK紅白歌合戦。第76回を数える2025年は、「つなぐ、つながる、大みそか。」をテーマに掲げて放送された。ゲスト審査員をつとめた文芸評論家・三宅香帆氏が、その模様を振り返る。(全2回の1回目/続きを読む

三宅香帆さん 

◇◇◇

審査員席で「度肝を抜かれた」光景

 堺正章さんと、ちゃんみなさんと、TUBEが、肩を組んで、郷ひろみさんの『2億4千万の瞳 -エキゾチック・ジャパン-』にあわせて爆裂に楽しそうに、踊っている。

 

 そんな光景がまさか存在するとは。私は審査員席で度肝を抜かれていた。

 NHKの紅白歌合戦。言わずと知れた、年末の祭典である。

ADVERTISEMENT

 私も毎年紅白は帰省のタイミングで見ていたが、大抵ごはんやお風呂や家族団欒の片手間に、SNSを横目に見るものだった。なにより、今回初めて生のステージを観られるとのことで、どきどきしながら席に着いた。

第76回NHK紅白歌合戦の台本。平均世帯視聴率は前半30.8%、後半35.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)で、3年ぶりに35%を超えた

 そこでステージを観ていて感動したのはーーカメラに映っていないところでも、かなり、アーティストの皆さんが、盛り上がっていたことだ。

 そう、紅白歌合戦とは、ライブなのである。私は忘れていたのだが、NHKホールに観客が集まり、その場をたくさんのスターが集まって盛り上げるライブの祝祭なのである。フェスの元祖だと言って良いかもしれない。

 だからこそ、カメラに映らないところでも、アーティストたちは全力で盛り上げる。本当に、舞台に出てきた時は、ほかのアーティストの歌を盛り上げている。音楽に合わせて体を揺らし、掛け声を響かせ、みんなで踊っている。

「これがプロだ」と感動したコラボステージ

 とくに感動したのは、たとえばM!LKの皆さん。『イイじゃん』のパフォーマンスも、生の息遣いが感じられてすごい、と感動したのだが、坂本冬美さんの『夜桜お七』でのコラボステージも素晴らしかった。アイドルと演歌歌手のコラボというとなんとなくアイドルが盛り上げるもの、というイメージが私には(失礼ながら)勝手にあった。

 が、生で見ると、『夜桜お七』の世界観をM!LKは表現しようと、5人全員が表情含め本当にミュージカル舞台であるかのように踊っていた。カメラに抜かれていないところも揃っていた。すごい、これがプロだ、と感動した。

坂本冬美『夜桜お七』コラボステージでは和装姿で登場したM!LK(NHK「紅白歌合戦」公式Xより)

 あるいは、郷ひろみさんの『2億4千万の瞳』のステージ。たくさんのアーティストが舞台に集結する演出だったのだが、とくに目を引いたのが、堺正章さん、ちゃんみなさん、TUBEの前田さん。横並びだったお三方が、肩を組んで全力で歌い踊っていて、ものすごく楽しそうだった。AKB48はレジェンドメンバーも現役メンバーも、互いに負けじと飛び跳ねていた。Mrs. GREEN APPLEの皆さんも、ハイタッチしていた。

 思わず、体が動き出す。そういう音楽をみんながライブで共有する。そうだ、これが紅白歌合戦という祝祭なのだ、と思った。

 というのも、『夜桜お七』のステージにしろ、『2億4千万の瞳』のステージにしろ、こんなにも違う「界隈」の歌手たちが一緒に最高のテンションで盛り上がることが、他にどれほどあるだろう?