1953年にテレビでの放送がスタートし、年末の風物詩となっていったNHK紅白歌合戦。第76回を数える2025年は、「つなぐ、つながる、大みそか。」をテーマに掲げて放送された。ゲスト審査員をつとめた文芸評論家・三宅香帆氏が、その模様を振り返る。テレビには映らなかった“舞台裏”で繰り広げられていたのは……。(全2回の2回目/続きを読む

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紙吹雪をモップで…人力で支えられる大舞台の裏側

 審査員席で紅白歌合戦を見ていると、とにかく出てくるモップの数と舞台展開の速さに驚く。

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 もうあらゆる人の手が集まって、紙吹雪が飛ぶたびに、それをたくさんの人の手にあるモップが片付けてゆく。そして大掛かりなステージが現れるたび、人が押しながらそのステージを設置する。なんと、すべて人力である。

「第76回NHK紅白歌合戦」の台本。平均世帯視聴率は前半30.8%、後半35.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)で、3年ぶりに35%を超えた

 私は紙吹雪や銀テープが飛んでいくその片付けをまさか人の手でやっているとは思ってなかったので、感動しつつ見ていた。

 そう、すべては人の手にかかっている。

審査員も知らなかった矢沢永吉のサプライズ登場

 裏側を見ていて驚いたのは、プロであればあるほど、最後まで祝祭を盛り上げ切っている、というところである。

 紅白歌合戦はライブなので、観客も一緒になって盛り上がる。ペンライトを振ったり、矢沢永吉さんの舞台ではタオルを持ったり、Mrs. GREEN APPLEの舞台では花を持ったりと、さまざまな演出を観客含めてつくりあげているところが楽しい。矢沢永吉さんがNHKホールにサプライズ登場する“生ステージ”は審査員も知らなかったので、会場中から歓声が上がっていた。

「都内某所」から東京タワーが見える夜景をバックに『真実』を歌い上げた後、NHKホールにサプライズで登場し『止まらないHa~Ha~』『トラベリン・バス』の2曲を披露した矢沢永吉

豪華な審査員席の“盛り上げ上手っぷり”

 そして、私がなにより感銘を受けたのは、同じ審査員席に座っている方々の盛り上げ上手っぷりだった。

 とくに、仲野太賀さんはそれはもうすごくて、紅白が始まる前から終わった後まで、とにかくずっと音楽に合わせて盛り上げていた。4時間座りっぱなしで、普通の人だったら腰が痛くなるタイミングもあるのではないかと勝手に思っていたのだが……仲野さんは最初から最後まで本当にずっとテンション高く、掛け声もずっと掛けていて、観客をいちばん盛り上げていた。

 カメラに映るかどうかなんて関係なく、ずっと体を揺らし、ペンライトを振って、楽しそうだった。というかそんな疲れなんて終わった後もまったく見えなかった。本当にこの人すごい、と横で見ていて瞬間的に思って、「そうだよな、この人大河ドラマ(『豊臣兄弟!』)主演だもんな……」としみじみ思った。これが大河ドラマで主演を張る人の体力と気力のキャパシティである。