戦後73年。戦争体験者から“あの時代”を表現する新世代まで、それぞれの「歴史との向き合い方」とはどんなものでしょうか。昭和19年、広島は呉の北條家に嫁いだ女性・すずを主人公にした『この世界の片隅に』。主演の松本穂香さんは、戦時中という舞台をどんな思いで演じているのでしょうか。(全2回の1回目/#2へ続く)

松本穂香さん

すずさんは、気負わない人

――『この世界の片隅に』の主演オーディションは約3000人の応募があったとか。

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松本 と聞いております。撮影の直前にその数字を知ったくらいで……。

――ドラマの脚本は岡田恵和さんですが、オーディション時にはいらっしゃったんですか?

松本 最終オーディションにいらっしゃいました。岡田さんには、私が青天目澄子役で出演した『ひよっこ』でもお世話になっていたので、何か不思議な縁を感じています。最終に残った時には「気負わずにね」って言葉をいただきました。

――主人公のすずを演じるにあたって、まずどんなことを考えたんですか?

松本 うまく演じようとか、引っ張っていこうとか無理に思わないようにしようと。まさに「気負わずに」です。相手役の松坂桃李さん、義理のお姉さん役の尾野真千子さんをはじめ、周りには素敵な先輩がたくさんいらっしゃるので、みなさんから受け取るものを私は大事にしていこうと思いました。それは、すずさんも同じなんですよね。周りに支えられて、頑張れている人。

「この世界の片隅に」ですずを演じる ©TBS

『ひよっこ』からさらに昔の「暮らし」

――『ひよっこ』は1960年代後半を主に舞台にした作品でしたが、今回はさらに昔、1945年の終戦に向かう太平洋戦争末期が舞台です。

松本 戦争が題材になっている作品に取り組むのが初めてのことだったので、いろんな資料で勉強しました。特にこの作品はすずさんの目を通した女性たち、戦時中の普段の生活を描いた世界ですので、戦時中の「暮らし」についての本を特に夢中になって読みました。

――たとえばどんなものを?

松本 演じるにあたってはイメージが必要なので、いろんな写真が載っている分厚い本をめくっていました。そこには生活についてだけではなく、空襲のあとの生々しい写真なども載っていて……本当にこういうことが起きたんだなって、単純な感想なんですけど率直にそうとしか思えなくて。想像だけではもう全然追いつかないって呆然としました。