こうした悩んで自問自答を繰り返す苛酷な現場作業は、8月17日に終了する。その日の『業務日報』は、《今日で石巻市委託業務最終日となる。2週間前に約半分ほど処分した棺の廃棄を、最後まで行うという目標で作業を行う》で始まり、次のように締めくくられている。

《辛く苛酷な仕事だからこそ、チームの結束がなにより重要で、それは、最強で最高のチームだったと思う。この後、この取り組みをしっかり記録し、東日本大震災がもたらした「死」の側面を後世に残していかねばならない》

東日本大震災後に行われた「仮埋葬」(写真は宮城県東松島市) ©時事通信社

苛酷な作業の過程で生まれた「遺体」へのこだわりとは?

「もともと人選をする時に少しタフな社員を選んでいたし、新入社員もいましたが、信頼関係、人間関係をしっかりと築いたメンバーで、互いにフォローしながら業務に臨みました。どんなご遺体に接しても、『自分たちはプロなんだから』という強い意識を持っていました。それに掘り起こしのメンバーだけでなく、安置所で対応するスタッフも、みんなが大変な状況でした」(西村)

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 震災の記憶は薄れないし、薄れさせてはならない。清月記は毎年3月11日に県内18会館に献花台を設置しており、14年目の2025年も大勢の人が献花に訪れた。東日本大震災は多くの教訓を残したが、仮埋葬を掘り起こして火葬するという苛酷な過程に携わった西村には、「遺体」へのこだわりが生まれたという。

「ご遺体の変容に遺族の方が後ずさりしてしまうような状況は、本当に悲しいことです。ですから我々のような葬儀社の仕事として、生前とできるだけ変わらないコンディションのご遺体にして、みんなが抱きしめたり手を握ったりできたらいいな、と思っていました。それができる技術としてエンバーミングがあります。その情報収集をしたうえで5年~6年前から準備を進め、23年8月にここ(仙台中央斎場清月記)にセンターを設けて、エンバーミングを行う態勢を整えました」

 エンバーミングは遺体に防腐、殺菌消毒処置を施して感染症などを防ぎ、衛生的に保存する技法だ。長期保存をしなければならない海外からの遺体搬送の際には必ず行われる。女優の米倉涼子が国際霊柩送還士役で主演してヒットしたドラマ『エンジェルフライト』で、認知度が上がった。

 清月記でのエンバーミング料金は18万円から。センターは地下1階に置かれていた。機器類が設置され2つのステンレス製の処置台が並んでいる。エンバーマーと呼ばれる資格者が配置され、月に数十体の処置を行うという。

最初から記事を読む “土葬された遺体”の口や鼻から、血液と体液が流れ出て…東日本大震災後に行われた「仮埋葬」の実態「現実を目の当たりにして震えた」