「互いを深く想うからこそ」のすれ違い

 子は親を理解したかった。親は我が子をこの苦痛に巻き込みたくなかった。すれ違いは、互いを深く想うからこそ。そして、自分自身から目を背けたからでもある。

 何があろうと、人生は続いていく。ならば楽しもう、愛し合おう。悲しむ暇などないのだ。そんなエデクと、理想と大きく隔たった自身への苛立ちや孤独に苦しむルーシー。ホロコーストという重い背景をもちながらも、主題はあくまで家族の絆、再生の物語だ。ちぐはぐだった親子は、この旅の終わりにどんなたからものを手にするのか。ぜひ見届けてほしい。

© 2024 SEVEN ELEPHANTS, KINGS&QUEENS FILMPRODUKTION, HAÏKU FILMS

すが・しのぶ 1972年、埼玉県生まれ。上智大学在学中に作家としてデビュー。歴史小説を多く手掛ける。大藪春彦賞を受賞した『革命前夜』(15年)では、ベルリンの壁崩壊前夜の東ドイツへ渡った若者が、音楽を通してかけがえのないものを見出す旅路を描いた。

INTRODUCTION

ユリア・フォン・ハインツ監督がリリー・ブレットの小説『Too Many Men』を映画化したヒューマンドラマ。ニューヨークで成功したジャーナリストの娘とホロコースト生存者の父がポーランドを旅する姿を、ユーモアを織り交ぜて描く。ドラマ『GIRLS/ガールズ』で知られるレナ・ダナムが娘の心の揺れを等身大で表現し、俳優だけでなく作家、司会者としても活躍するスティーヴン・フライが、陽気さの裏に深い悲しみを宿した父を演じている。

 

STORY

1991年、ワルシャワ。ジャーナリストのルーシーは、父エデクとともに、生まれて初めて父の祖国ポーランドを訪れる。到着直後から父の思いつき、わがままが原因で早速気持ちのすれ違いが発生。父のルーツであるワルシャワ、ウッチ、クラクフなどを訪れ、かつて父や家族が暮らした家やアウシュヴィッツ=ビルケナウの収容所で語られた言葉から、父エデクが長年封じてきた過去が徐々に明らかになる。衝突と和解を繰り返しながら、旅の中で父と娘が見出したものとは。

 

STAFF & CAST

監督:ユリア・フォン・ハインツ/脚本:ユリア・フォン・ハインツ、ジョン・クエスター/出演:レナ・ダナム、スティーヴン・フライ、ズビグニェフ・ザマホフスキ、イヴォナ・ビェルスカ、マリア・マモナ/2024年/ドイツ・フランス/112分/配給: キノフィルムズ/© 2024 SEVEN ELEPHANTS, KINGS&QUEENS FILMPRODUKTION, HAÏKU FILMS

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