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なぜ韓国で日本への関心が急速に低下しているのか――2018上半期BEST5

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対日政策を事実上「放置」する文在寅政権

2018/08/17
note

北朝鮮との対話は「進歩派政権としてのアイデンティティ」

 とは言え、文在寅政権の施策の全てが上手く行っているわけではない。勿論、その一つは北朝鮮との関係だ。北朝鮮との対話を「進歩派政権としてのアイデンティティ」の一つとする文在寅政権は、北朝鮮側が核とミサイル双方の実験を繰り返す中でも、この姿勢を崩さずにやってきた。彼らはその為にアメリカを中心とする関係各国の同意を取り付け、その実現に依然努めている。

 しかしながら問題は、このような韓国政府側の努力にも関わらず、肝心の北朝鮮が冷淡な対応に終始していることである。北朝鮮の挑発的な姿勢は、逆に朝鮮半島の緊張を激化させる要因となっており、韓国政府を大きく苛立たせることとなっている。

韓国側の対話の努力に対して、北朝鮮は冷淡な対応に終始している ©getty

サンフランシスコの慰安婦像設置決定は朴政権期時代

 さて、文在寅政権の対日政策はどうなっているのだろうか。まず明らかなのは、この政権における対日外交の優先度が極端に低いことだ。

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 この点については少し解説が必要かもしれない。例えば、日本のメディアを騒がす韓国内外での慰安婦や徴用工を象った銅像の設置は、各種市民団体によるものであり、文在寅政権の施策によるものではない。

 その典型が現在、注目されているサンフランシスコの慰安婦像設置問題である。そもそもこの動きが始まったのは2014年であり、既に翌2015年にはサンフランシスコ市議会が全会一致で、慰安婦像の設置を決めている。当時は未だ慰安婦合意前、この種の活動に主として従事する進歩系市民団体と厳しい対立関係にあった朴槿恵政権期のことである。

 銅像設置への動きが具体化したのは、今年に入ってからのことで、この時点では朴槿恵は国会での弾劾の結果として、職務停止状態にあり、韓国政府は外交政策を満足に行うことすら出来なかった。他方、文在寅政権が発足したのは、2017年の5月。それ以前の海外での状況が、未だ発足もしていなかった文在寅政権の施策の結果である筈がない。

 韓国国内は一枚岩ではなく、ましてや国外にある市民団体が韓国政府の統制下にある訳ではない。加えて言えば、様々な施策が銅像のような具体的な形になるまでには一定の時間がかかる。だからこそ、ある時点での何かしらの「結果」の原因を、その「結果が出た時点での政権」に求めるのは、時に大きな間違いなのである。

 実際、市民団体等の動き等を切り離して冷静に眺めた時、発足後の文在寅政権の対日政策の印象は大きく変わってくる。文在寅をはじめとする現政権の要人は、日韓関係に対して矛盾に満ちた断片的な言及やパフォーマンス――その一つがトランプ訪韓時の晩餐会での出来事である――を行う一方で、具体的な施策は何一つ明らかにしていない。例えば、慰安婦合意について韓国政府は、政府スポークスマンが見直しを示唆した発言を行ったかと思えば、これを即日取り消している。また徴用工問題については、文在寅自身が自らの韓国内での発言を、安倍首相との電話会談で修正する一幕すら存在した。

 明らかなのは、この政権が発足から半年以上経た今日においてすら、具体的な対日政策を何も決めず「放置」していることである。だからこそ、彼らは日本との間の歴史認識問題に関わる様々な市民団体の動きを後押しもしなければ、統制もしていない。