世界的な速報が起これば、深夜3時でも現場に駆け付ける――。BBCの最前線で活躍する大井真理子氏は、3人の子どもを育てながらそんな激務を続けてきた。
しかし、娘の初めての学校発表会を取材のために欠席した時、車中で送られてきた写真を見て涙したという。働く母親として直面した葛藤と、それを乗り越えた職場環境について語った。(全2回の2回目/はじめから読む)
(初出:「文藝春秋PLUS」2026年1月6日配信)
往復60時間にも及ぶ過酷な取材も
BBCでの速報対応は過酷だ。「何か起きた瞬間に、それが朝の3時だろうと」招集がかかり、誰が最初に行けるかを問われる状況が常態化している。大井氏は当時を「常にスタンバイという感じ」だったと語る。
特に印象深いのは、インドネシアの津波・地震の際の出来事だ。バリで休暇中だった大井氏に現地取材の指示が下る。往復60時間にも及ぶ過酷な取材だったが、問題は帰国のタイミングだった。「金曜日に長女の初めての学校の発表会があってそれには行きたい」と上司に相談したものの、「行けるといいね、間に合うといいね」と言われ、結局間に合わなかった。
先輩女性からのアドバイス
帰りの車中で夫から発表会の写真が送られてきた時、大井氏は涙を流した。「『本当にごめんね』と泣きながら謝ったことを娘は今も覚えていて、『もう二度とミスらないよね、ママ』と言われる」という。
しかし、職場の先輩女性からアドバイスを受け、考え方を変えた。「『ごめんね』と言うと、子どもは自分をかわいそうな子だと感じてしまう。そうではなく、『あなたがいい子で留守番してくれたから、ママは良い仕事ができたよ。ありがとう』と伝えれば、子どもは役に立てたと感じられる」と教わったという。
