私自身も、日本とバスク地方の文化は非常に近いと感じてきました。自然素材を使い、職人の手作りで家を建て世代を越えて継承していく文化が共通している。言葉の使い方にも親近性があって、論理的というより人間の身体性に根付いた「オノマトペ」を日本語と同様にバスクの人々も多用します。

隈氏 ©文藝春秋

 オノマトペとは、「モノの状態」や「モノとモノとの関係」を表す言葉ですが、私は建築においても重視していて、「建築と大地」「建築と身体」の関係を考える上で、さらには「人間の身体」を「世界」に“接地”させるという、人間にとって最も重要な営みを分析するために、オノマトペに大きな可能性を感じています。『隈研吾 オノマトペ 建築 接地性』(エクスナレッジ)という本まで出していて、「ぱらぱら」「さらさら」「ぐるぐる」「ぱたぱた」「ぎざぎざ」などのオノマトペをもとに、自分が携わった建築物を分類して、解説しました。

 トッド それは面白い視点で、大変興味深いですね。いずれにせよ、バスク地方の家族は「直系家族の典型」と言えます。

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「直系文化的建築」とは?

  ただ、同じ直系家族でも、日本とドイツの建築文化には違いが感じられて、その点をトッドさんにぜひお伺いしたい。「バウハウス」(1919年にドイツに設立された国立総合デザイン学校。「建築の家」の意)が典型的ですが、ドイツの建築は日本の建築と違ってどこか“工業的”でなぜか冷たいからです。

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 トッド 私にとってバスク地方の家は、同じ直系家族のバイエルン地方(ドイツ南東部)の伝統的な家を思い出させます。一方、「バウハウス的建築」には「ドイツ文化との断絶」を見ます。四角四面で単純化された建築に「伝統を断ち切ろうとする意志」を感じるのです。

 1930年代に、少し裕福になった私の曾祖父母が、パリ近郊にバウハウス様式の家を建てたのですが、光に満ちた素晴らしい家でした。ですからバウハウスが何たるかを多少は知っています。実際、バウハウスの時代は、ドイツにとってまさに革命的な時代で、文化の各領域でドイツ的伝統の根を絶つような動きが見られました。

※本記事の全文(約9000字)は、文藝春秋2月号および、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています(エマニュエル・トッド×隈研吾「日本の美意識の底力」)。全文では、以下の内容をお読みいただけます。
・外から吸収し続けないと成立しない米国社会
・「優雅さ」「素朴さ」「軽やかさ」のある日本建築
・「未来へのビジョン」と「手仕事」の欠如

出典元

文藝春秋

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