成田 将来それを医学の範疇に組み込めるようになると思われますか?
本庶 難しいと思います。脳の中身を知るということですからね。
成田 精神疾患を除くと、そもそも人の心の安寧を測ること自体がほとんどできないわけですよね。いずれ心の安寧を私たちがちゃんと測れるようになるか、それに対して様々な医療行為が与える影響を測れるようになるかという問題になりますね。
本庶 それはちょっと無謀な問題だと思います。現時点ではね。かなりギャップがありすぎる。
寿命は延ばせるか
成田 それが無謀すぎるとすると、健康な時間を延ばすためにこれからの医学はどんな問題に取り組むことになるでしょうか? 100年前と今を比べると、人の健康状態も医療技術も別次元に進化しています。ここからさらに時計を100年進めたとき、医学はどんなことを達成できていると思われますか?
本庶 医学は基本的に寿命を延ばすことはできません。だから、「限られた寿命をきちんと全うできるかどうか」という問題になります。
成田 100年後の平均寿命が120歳とか130歳になっていることはないでしょうか?
本庶 まあ、ないでしょう。
成田 それは人間という種の寿命に根本的な限界があるからなんでしょうか? というのは、最近は老いに抗うアンチエイジング技術・製品や、人によっては人体を凍結保存して未来に送って不老不死みたいなことまで議論されることがありますよね。
本庶 それは医学を知らない人ですね。基本的には生物は老化します。人間の身体は日々細胞分裂を繰り返して、そのたびにDNAをコピーする。その過程で小さなミスマッチ、つまりコピーミスが生じます。これが蓄積していくことで、身体の組織や細胞が衰えていく。これが老化の正体です。
成田 老いることは生きることと表裏一体ですね。老いない生命、老いない人間はありえるのかどうか。
※本記事の全文(約5600字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています(成田悠輔の聞かれちゃいけない話 第11回 1万8000字ノーカット完全版 前編)。全文では、下記の内容をお読みいただけます。
・がん治療の革命
・免疫療法が効くがんと効かないがん
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