経済学者・成田悠輔氏がゲストと「聞かれちゃいけない話」をする対談連載。今回のゲストは、本庶佑さんです(構成・伊藤秀倫)。
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健康とは何か
成田 最初に伺いたかったのが、まさに体調や健康なんです。医学や生命科学の根本目的の一つは「健康でまともな体調で生きられる時間を長くする」ではないかと思います。
そもそも人間が健康に生きるとはどういうことか、医学的な定義はあるんでしょうか。
本庶 学問的定義は僕も知りません。ただ、健康とは何かといえば、まず「心の安寧」という問題が一つ。それから、生理学的ないわゆるフィジカルな健康という問題の、両面があると思うんです。さらにフィジカルな健康についても、本人の自覚と客観的な医学的データと両方あって、本人は「自分は健康だ」と思っていても、実は血糖値が高いということもある。だから両面で見ていかないといけないと思います。
当然血糖値が高ければ問題は起こるんだけれども、本人が気づかないレベルということがありますからね。
成田 主観と客観が相互作用するのも難しいですよね。自覚がないから不摂生を続けて血糖値が高まってしまう、とか。そうすると主観と客観の乖離が内側から増幅されていく。
心の安寧は医学の範疇じゃないね
成田 心の安寧の側面は、フィジカルな医学ではどう捉えられてきたんでしょうか?
本庶 何もないですね。これは宗教の世界。
成田 ですよね。臨床現場のお医者さんたちのコミュニケーションや感情のレベルで個別に経験的に対処されていますよね。
本庶 精神医学的な問題は別として、心の安寧という問題は医学の範疇じゃないね。

