33歳の響は、大手エネルギー関連会社勤務。順調な人生に見えるけれど、パートナーはモラハラ男だし、仕事にやりがいはない。そんな響は最近、“庶務のおばちゃん”桜子が気になっている。どう見ても小太りのフツーのおばさんだが、なんだか幸せそうなのだ。わたしは、彼女と友達になりたいのかも――。
アラサー&キャリア女性の響が、桜子をはじめとするおばさんたちと急接近して、人生が少しずつ変化していく姿を描く『わたしは今すぐおばさんになりたい』。著者の南綾子さんは、本書では「とにかくおばさんを書きたかった」という。
「自分のまわりには桜子さんみたいなおばさんたちが多くて。彼女たちの生き方を見ていると、いいなあ、と思うことが多かったんです。たとえばおばさんの会話って、基本的に褒め合うんですよ。着ているワンピースをすごく褒めるとか。こんなことを言うのもなんですが、おばさんになったら、正直、服に似合うも似合わないもないじゃないですか。そこでマウントを取り合ってもしょうがない。だから評価もしないし、着れたらいいよねみたいな(笑)。そして、お互いに持ち物とか、買った物とかを、それ好き! かわいい! と褒め合う。それが見ていて気持ちいいんです」
おばさんたちの会話には、コツがある。
「グループでいる時は、夫や子ども、孫の話など、デリケートな話題には踏み込まない。1対1とか、事情を知っている2~3人の時はするけど。何十年も生きてきたからこその知恵というか処世術ですよね」
桜子の友人には、様々な属性を持つおばさんたちが出てくる。未婚・既婚・子あり・子なし・闘病中など、バラエティ豊かだ。
「自分は今40代で、響みたいにマウント合戦の渦中にいるような20~30代、そこからはすでに抜け出している50代以上の中間にいます。どちらの雰囲気もわかる中で、まだ年齢的にはおばさんじゃなくても、桜子たちみたいな気持ちのいいコミュニケーションを取れるはずじゃない? と思っているんです」
響が憧れる桜子は、結婚歴はあるものの独身で子なし、持ち家ではなく、非正規雇用で暮らしている。
「桜子は、他人からの『幸せの承認』を得ないで暮らしている人なんです。世間でいう女性の幸せのロールモデルに照らし合わせれば何も手に入れていないけど、そもそもそんな承認を求めていない。人生で何も得なかった。でもそれでいいじゃない? と桜子は思っている……というより、そんなことすら考えていないかも」
響と桜子の仲は、響の異動をきっかけに、疎遠になってしまう。桜子は自分に憧れる響に「一人は楽しいよ、一人でも幸せよって、あんまり他人に言いたくないの」と言う。他人の人生に責任は負えないのだ。
「どんな人生を生きるにしても、自分で決めなきゃ意味がないということです。責任は自分で取るものですからね。こんな本を書いている自分だって、この先結婚しないとも限らないし」
本書には、男性はほとんど出てこない。だが次回作は、未婚男性に焦点を当てた作品を構想中だという。
「男はいらない、と言いたいわけではないんです。一人ひとりが幸せな社会がいい社会だと思うから。日本の社会が良くなるためには、(不本意な)未婚男性が幸せになることが重要だと思っていて。もちろん、女性をあてがうことが解決策、ではありません。どうしたらよいのか、そこを書けたら、と思っています」
みなみあやこ/1981年、愛知県生まれ。2005年「夏がおわる」で第4回「女による女のためのR-18文学賞」大賞を受賞しデビュー。著書に『婚活1000本ノック』『死にたいって誰かに話したかった』など多数。

