ラーメン一杯も迷う極貧生活に…

 しかし退職金もあった貯金は数カ月で尽き、ラーメン一杯も迷う生活になった。

 このまま映画を作れず終わってしまうのかと思った僕は変なこだわりや恥を捨て、結局もうやらないと決めていた福祉の仕事に戻った。子どもから大人までライフステージを広げ、昼夜問わず働き、稼いだ分をすべて映画に投じる日々だった。借り入れもしながら、キャッシュフローのすべてを作品に注ぎ込み、気づけば長編を2本作っていた。人生は常にギリギリ生かされているのだが、不思議と少しずつ前には行っているのかも。

 映画の何に魅せられているのかは、正直、今もまだうまく説明できない。映画は体験であり、スクリーンの中には無数の運動が生きていて、その躍動に心を掴まれ続けている。

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 だから僕は今も映画を作りたいと思っているのかな?

©Life is Beautiful Okay

いしだ・しのみち 1988年生まれ、愛知県出身。初長編監督作品『リバーシブル/リバーシブル』がぴあフィルムフェスティバル PFF2023アワード審査員特別賞を受賞。長編映画脚本「ひかるの合唱」は 2024年サンダンス・インスティテュート/NHK 賞の NHK推薦作品に選出。長編2作目『ライフ・イズ・ビューティフル・オッケー』は2025年10月4日からユーロスペースにて劇場公開された。【好きな作品・影響を受けた作品】好きな作品は日々、その日によって変わるので、影響を受けたと言えば、デヴィッド・フィンチャー監督、是枝裕和監督の作品はなぜか全て観ています。あと『彼らが本気で編むときは、』(荻上直子監督)は好きです。

『ライフ・イズ・ビューティフル・オッケー』

牧原和章(田丸大輔)は木下家が営む中華料理屋で居候をしながら働いていた。長子の美和(田中祐理子)は働きもせず、未完の物語を書き続ける日々。牧原は美和のために賄いのオムライスを作る。美和はそのオムライスを食べる。二人の日常は、変わらずこのまま続いていくものだと思われた。ある日の営業中に訪れた客・聡美が美和の食べていた賄いのオムライスを「自分も食べたい」と牧原に頼む。その出会いをきっかけに牧原の日常に小さな変化が生まれていく。

 

監督・脚本:石田忍道/出演:田丸大輔、田中祐理子、斎藤千晃、小松遼太、伊藤亜和/2024年/日本/84分/配給:ひと夏の冒険出版/©Life is Beautiful Okay/現在、次の劇場上映を準備中

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