作中では核爆発を「物質が物質でなくなる瞬間に発生する巨大な力」と表現する。そのような圧倒的なパワー、国家を揺るがすほどの力をせっかく手中に納めたというのに、沢田研二は大金や権力を手にすることも、革命を起こすこともしなかった。原爆と一緒に過ごしすぎたせいで被曝しちゃうし、ストーンズも呼べなかった。
手に余る力を持ってしまった人物の壮大な空回りを描いた映画であるともいえるかもしれない。彼はどこかで間違えたわけではなくて、はじめから勝てない戦いに身を投じて、そもそも勝つつもりもなかったのだ。
拙作『万事快調』と、それを原作とする児山隆監督による素晴らしい映画は前述の東海村を舞台としており、映画は多くの場面で実際に東海村で撮影された。
高校生が大麻の栽培と密売で金を稼ぐというシナリオで、テーマやプロットには多くの面で『太陽を盗んだ男』からの影響がある。自分を構成するルーツのひとつといってもいい。
『太陽を盗んだ男』もさることながら、前作『青春の殺人者』もまた、長谷川和彦作品はドライかつ無常、登場人物たちに寄り添ったりはしないクールな視点を徹底している。
現代に蔓延するポピュリズムは巨大な力だ。それに対抗するための別種の力が、生ぬるい共感を拒絶する、長谷川和彦的スタンスではないだろうか。私は、それを手にしたい。
最後に、どちらかといえば諦観のある長谷川作品群から、あえて逆説的に、前向きなメッセージを得るとしたら……。
お前はどうせヒマだし、とくに失って困るものはなにも持ち合わせてはいないんだから、戦えよと、勝てなくてもいいから、せめて権威主義者の眉を顰めさせるくらいのことはしてみろよ、ということだろうか。チンケな共同体意識で馴れ合うな、パニックをもたらせ、と。
しかと受け取った。
爆弾は作り終えた。いつどこで、なにに使うか。それが重要なのだ。まずは手始めに……
あっ
ドカーーーーーーーーン
波木銅(なみき・どう)
1999年、茨城県生まれ。大学在学中の2021年、『万事快調〈オール・グリ―ンズ〉』で第28回松本清張賞を受賞しデビュー。他の著作に『ニュー・サバービア』『順風満帆〈クラウド・ナイン〉』がある。
