『カウンセリングとは何か 変化するということ』(東畑開人 著)

 本書は数々のベストセラーを生み出してきた臨床心理士の著者が、カウンセリングの原理と全貌を解き明かした意欲作。このほど発表された「新書大賞2026」で大賞に輝いた。

「僕自身が著者の大ファンで、敬愛の念を綴った手紙とともに現代新書で何か書いていただきたいと依頼したところ、20年にわたる臨床経験の集大成となる本を書きたいというお返事をいただきました」(担当編集者の黒沢陽太郎さん)

 カウンセリングで行われることを「謎解き」「作戦会議」「冒険」「終わり」の4つに分け、ケーススタディとともに解説。「謎解き」ではカウンセラーが人の悩みをどう整理し、理解しているのかが描かれる。「作戦会議」ではメンタルヘルスの不調などに対処し、生き延びるための方法に取り組む例が示される。たとえば借金があって生活が立ち行かなくなる恐れがあるユーザー(カウンセリングの利用者)の親に援助を依頼するなど、現実的な問題に積極的に働きかける例も。「冒険」では今すぐ生活が破綻するような状態ではないが、人生が行き詰まり、根本解決しないと先へ進めない状況にある人に行われることを紹介。「終わり」ではカウンセリングを通してどのように人の心が変化するのか考察している。

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「本書のページ数は新書では異例ともいえる440超。新書は通常200ページ台前半ですが、初稿が上がってきた時点で大幅にオーバーしていました。そこから著者が書き直すうちにさらにページ数が増えていったんです。分厚くなれば“鈍器本”と言われて避けられるリスクがある。そのため編集者としては怖くなりましたが、著者はこの本に全部書くと覚悟を決めたのだと思ったので、腹をくくりました」(黒沢さん)

 書店で長く手に取られる本になってほしいとの思いから、発売前に試し刷りを作成し、書店員に読んでもらった。こうした種まきが功を奏し、発売前重版に。また新書は中高年の男性読者が多いが、本書に登場するケーススタディの女性に共鳴したのか、女性読者を大勢獲得する結果になった。

「この本を読んで救われたという感想もあり、人の心について考える本になったと思います。新書大賞の受賞を機に、読者との出会いがますます増えることを願っています」(黒沢さん)

2025年9月発売。初版1万5000部。現在7刷14万部(電子含む)