「鼻で笑われることが多いのですが…」

『ひみつきちのつくりかた』もそうでした。「こんな映画観てみたい」という動機がスタートです。その後に、自分の人間性や意識を取り込みはじめ作っていきました。僕が魅了される映画はまずその作り手の気迫であったり愛が伝わってくる作品だと思います。ちょっと精神論みたいになってしまいますが。映画は作品を通してその先にいる監督をはじめとした作り手たちの“人”を観るのが面白く、魅了される理由の一つです。

 あとはやはり“雰囲気”がすごく僕の中で重要な魅力材料です。映画を語る上で“雰囲気”というと鼻で笑われることが多いのですが、僕は現実から離れ、その世界に浸れるというのも映画の魅力だと思っています。物語を知っていても、何度も何度も同じ映画を観てしまうのはその世界に浸りたいからで、それってやっぱり美しい映像や、感情を高揚させるような音楽、音響を掛け合わせた魅力的な雰囲気がそこにあるからだと思っています。小説や舞台や漫画や、物語を語る色んな媒体がある中で、映画が持つ最大の強みは視覚と聴覚で観客を色んな場所に連れて行き追体験させられること、そして文字では語れないものを伝えられること、それがまさに“雰囲気”に直結しているのだと思っています。

©️2025 emir heart Inc.

いたばし・ともや 1994年、東京生まれ。学生時代は油絵を学び、数々の賞を受賞。大学時代、短編映画を撮り始め映像の世界へ。監督した短編映画も多くの賞を受賞した。MVの分野では、監督等を務めた日食なつこ氏の『エピゴウネ』が約140万回再生を記録(2025年11月現在)。2025年、初長編映画『ひみつきちのつくりかた』を全国で劇場公開。SKIPシティ国際Dシネマ映画祭にて観客賞を受賞した。【影響を受けた作品】『マグノリア』『インターステラー』『菊次郎の夏』【影響を受けた監督】ポール・トーマス・アンダーソン、デヴィッド・フィンチャー、ザック・スナイダー、ジャン=マルク・ヴァレ、北野武。

『ひみつきちのつくりかた』

小学校時代からの旧友である佐藤の葬式に参列するため、山上(廣末哲万)は地元へ帰省。そこで少年時代をともに過ごした御手洗(藤田健彦)、工藤(もりたかお)、豊永(佐藤貢三)と再会する。葬式の合間に工藤が1冊のノートを取り出す。そこには佐藤が小学生の頃に書いた「ひみつきち建設計画」があった。山上たちは夢描いていた“ひみつきち”を実際に建ててみることにするのだが……。2025年度新藤兼人賞銀賞を受賞。 

 

監督・脚本:板橋知也/出演:廣末哲万、藤田健彦、佐藤貢三、もりたかお/2025年/日本/109分/製作・配給: emir heart Inc. /©️2025 emir heart Inc.

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