A氏は羽田の事件の被害者グループのメンバーとも様々な取引を通じて接点があるという。では、A氏にとって今回のような被害は初めてなのか。

「自分は他に7キログラムのゴールドの現物を騙し取られたり、仮想通貨の口座のハッキングで1キロ分を抜き取られたり、まぁ今回含め、合計被害額は7億くらいありますね。警察にも行ったんですが、資金源だの色々ややこしい話になったので、最終的に通報せず、取り下げました」(A氏)

 多大なリスクを背負いつつゴールドの取引を続ける理由について尋ねると、それっきり返信は途絶えた。

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「金密輸をなくすのであれば、税制を改めるしかない」

 外資系銀行で金トレーダーとして活躍し、密輸の実態にも詳しい「日本貴金属マーケット協会」代表理事の池水雄一氏が、A氏に疑問を呈す。

「彼は『密輸に直接関わってはいません』と言うものの、それを承知の上でやっていると考えるのが妥当でしょう。日本国内に入ってきたゴールドの販売を代行すること自体が理解できず、正規のルートが存在しないことを示唆しています」

 さらに、ゴールドに関する消費税の問題を指摘する。

「日本はゴールドに消費税という付加価値税を付けている例外的な国で、買うときに支払った消費税が売るときに戻ってくるという考え方。プラマイゼロの堂々巡りの構造になっており、実質的に国民には何の利益にもなりません。一方、犯罪組織にとっては密輸すれば10%の消費税分が儲かるため、非常に魅力的。当局も水際対策に乗り出していますが、いわばイタチごっこです。金密輸をなくすのであれば、税制を改めるしかないでしょう」

「ほとんどの人間は知り合い」と豪語するA氏。事件の真相は“共食い”なのか。警視庁は強盗のみならず、その“金流”にメスを入れるべく捜査を続けている。

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