国民の3人に1人が発症する高血圧。2025年8月の改訂ガイドラインでは、後期高齢者の血圧も厳格管理へと舵が切られたが……降圧剤の副作用や過降圧、認知症リスクの増大など、総合的知見から導く“下方式”血圧管理法を伝授する。

「高血圧は冬場の疾患と思われがちですが、実は秋の発症例も非常に多い。前日との温度差や昼夜の温度差が大きいため、血圧が乱高下してしまうからです。“サイレントキラー”とも呼ばれ、自覚症状のない高血圧は、放置すれば心筋梗塞や脳卒中など突然死の原因となりかねません」

 

 危機感を露わにするのは、老年科専門医で、名古屋学芸大学大学院栄養科学研究科の下方浩史教授だ。

 これまで、40年以上に渡って、老年病(高血圧症や糖尿病、動脈硬化などを指す)の研究を続けてきた。

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 日本高血圧学会の推計によれば、高血圧症の患者数は約4300万人。国民のじつに3人に1人が発症しているのだ。このうち、治療を受けている総患者数は僅か1609万人で、多くは自覚がありながら治療を行わずにいたり、自覚さえない人ということになる。

下方教授

 もはや“国民病”ともいえる高血圧だが、2025年8月、日本高血圧学会の「高血圧管理・治療ガイドライン」の降圧目標が6年ぶりに改訂され、治療指針に大きな変化があった。

「75歳以上の降圧目標を、患者の背景によらず10mmHgも引き下げ、75歳未満の降圧目標と同一にしたのです」

 改訂前のガイドラインでは、降圧目標は75歳を境に区分されてきた。

「75歳未満の成人の降圧目標は、診察室血圧が130/80mmHg未満(家庭血圧は125/75mmHg未満)。一方、75歳以上は上の血圧が140mmHg、下の血圧が90mmHg未満(家庭血圧は130/80mmHg未満)と、降圧目標が下の世代より緩やかに設定されていたのです」

 ところが、今回、後期高齢者の降圧目標が大幅に引き下げられた。下方教授は首を傾げる。

「加齢によりどうしても動脈硬化は進むため、成人と同じ降圧目標を掲げる今回のガイドライン改訂は、後期高齢者にとっては厳しすぎるのです。高齢者では、厳格な血圧管理により、高血圧症以外の疾患リスクを増大させかねません。適正な血圧の数値とは、患者とかかりつけ医が二人三脚で見極めるもの。それぞれの年代や疾患のリスクに合わせた無理のない血圧管理を徹底すべきです」

 そこで、「90歳まで健康長寿」を目指すシニアのために、75歳を分岐点とした血圧管理の最新常識を紹介してゆく。

この続きでは、●過降圧で認知症リスク増大、減塩より栄養摂取を ●ほうれん草、納豆、高カカオチョコが3種の神器 など血圧管理の最新常識を取り上げている。記事の全文は「週刊文春 電子版」で読むことができる。また、本連載をまとめた書籍『90歳まで健康長寿』も好評発売中》

次の記事に続く 【高血圧】75歳以上の降圧目標が改訂→75歳未満と同じ数字に「75歳未満の世代とは区別して対策を練るべき」老年科専門医・下方浩史教授が改訂ガイドラインに提言