涙が出そうになるのを、必死でこらえた

「これは青春映画にしたいんですよ」近藤さんは最初僕にそう言った。そして撮影が終わり、オフラインを観た彼が「青春映画になりましたね」と言ってくれた瞬間、僕は報われたような気がした。さらにダビングが終わり、全ての工程を終えた後、小川さんが「面白い映画ですね」と言ってくれた。涙が出そうになるのを、必死でこらえたことを憶えている。

 僕にはおそらく青春時代なんてなかったと思う。けどそんな僕が監督した『万事快調〈オール・グリーンズ〉』は捻くれてて、ちょっと性格が悪くて、けど正真正銘の面白い青春映画になったと思う。

 そして、撮影を終えた今、振り返れば本当にいくつもの困難があった。けれど、それらは素晴らしいスタッフと瑞々しいキャストの力とアイデアによって、思っていたよりずっと軽やかに乗り越えられたように思う。この場を借りて、あらためて深い感謝を記しておきたい。

©2026「万事快調」製作委員会

こやま・たかし 助監督、オフラインエディターを経験後、CMディレクターとして独立。2021年に『猿楽町で会いましょう』で長編映画デビュー。同作で本誌2021年秋号「期待の監督」欄に登場した。

『万事快調〈オール・グリーンズ〉』(公開中)

ラッパーを夢見ながらも、学校にも家にも居場所を見いだせず鬱屈とした日々を送る朴秀美(南沙良)。陸上部のエースで社交的、スクールカースト上位に属しながらも、家庭では問題を抱えている映画好きの矢口美流紅(出口夏希)。未来が見えない町で暮らすどん詰まりの日々の中、朴秀美が地元のラッパー佐藤(金子大地)の家で×××の種を手に入れる。その出来事をきっかけに、同級生で漫画に詳しい毒舌キャラ岩隈真子(吉田美月喜)、岩隈の後輩で漫画オタクの藤木漢(羽村仁成)らを仲間に引き入れ、同好会「オール・グリーンズ」を結成、×××の栽培に乗り出す。人生を諦めるのはまだ早い! 自分たちの夢をかなえるために、この町を出ていくには、一攫千金を狙うしかない! そして、学校の屋上で、禁断の課外活動がはじまる。

 

監督・脚本:児山隆/原作:波木銅『万事快調〈オール・グリーンズ〉』(文春文庫)/出演:南沙良、出口夏希、吉田美月喜、羽村仁成、黒崎煌代、金子大地/音楽:荘子it(Dos Monos)/2026年/日本/119分/配給:カルチュア・パブリッシャーズ/©2026「万事快調」製作委員会/全国公開中

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