キャリア初のオスカーを受賞した後の問題は、「次作に何を選ぶか」。だが、『ザ・ホエール』で主演男優賞に輝いたブレンダン・フレイザーに、意外にも迷いはなかった。

ブレンダン・フレイザー
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「オスカーを取るには、監督、スタッフ、メイクアップアーティスト、すべての部分で優れた人たちに囲まれ、支えられていなければならない。そして、たっぷりの運が必要。だが、受賞をしてもその後に魔法が待っているわけではないよ。自分の道を自分で選ぶのは同じ。僕は以前から何か新しいことをやりたいと思ってきた。そこへ、『レンタル・ファミリー』という脚本が舞い込んできたのさ。その段階ではまだ資金も集まっておらず、俳優のストライキが起きたりもして時間がかかったが、この仕事をもらえて自分はなんとラッキーなのかと思ったね」(フレイザー)

レンタル家族を題材にした物語

『レンタル・ファミリー』は、大阪生まれの日本人女性監督HIKARIが書き下ろした、パーソナルな映画だ。高校時代に留学したユタ州で、唯一人のアジア系という体験を味わった彼女は、性別と国籍をひっくり返した話を書こうと思いついたのだ。

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「執筆パートナーのスティーブン・ブレイハットと『アメリカ人が日本でできる仕事は何だろうか』と探していると、まずは英語教師や通訳なんかが出てきたんですけれど、そのうちレンタル・ファミリーというのを発見したんですよ。『これ何?』と思って、リサーチを始めて。日本人でも『そんなの聞いたことない』って思うでしょ? それが面白いし、そこに現代人が感じている孤独、人とのつながりが失われているという気持ちについてのテーマを合わせてみたいなと思ったんですよね」(HIKARI)

HIKARI監督
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日本人スタッフはF1のクルー並みだ

 売れない俳優として東京に長く住んできたフィリップ(フレイザー)は、レンタル・ファミリー会社に就職することになり、日本人の客を相手に、花婿、父親、記者などを演じていくことになる。東京でロケができることは、フレイザーにとって最高の魅力だった。

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「過去にも3回ほど来日したが、取材でいつもホテルに缶詰め状態。そんな中で少しだけでも外出すると、日本の歴史や食事、文化に感激させられた。今回も外を歩いたけれど、僕は頭ひとつ飛び出ている白人で目立つのに、みんな礼儀正しくて、放っておいてくれたよ。日本の人たちのことを僕は本当に尊敬する。この役のためには、日本語もしっかり勉強した。棒読みはしたくなかったから。現場では、日本のクルーの優秀さにびっくりさせられたね。彼らはF1のクルー並みだ」(フレイザー)