『「いきたくない」もわるくない?』(吉田田タカシ 著)

 吉田田タカシさんの初の著書『「いきたくない」もわるくない?』は、子どもの不登校についての新しい取り組み「トーキョーコーヒー」について、そのコンセプトや活動内容を具体的に紹介する本だ。トーキョーコーヒーとは、2022年に設立され、現在は全国400以上の拠点を擁し、昨年グッドデザイン賞も受賞した注目のムーブメント。吉田田さんは、その発案者であり、代表である。

「今、学校に行かないことを選ぶ小中学生は、全国に35万人もいます。潜在的にはもっといると思うし、増え続けてる。ただ、それって子どもの問題? 違うよね、この社会を作ってきた大人こそが取り組むべき課題でしょ。だから、みんなで話してみませんか? 一緒に手を動かしながら! ……というのが、僕がこの本で伝えたいことなんです」

 そう語る吉田田さんは、自身をデザイナーと称する。また美大出身で、4歳から社会人まで約200人が通うアートスクールの代表でもある。そんな彼が、現在の活動に至った経緯とは。

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「最初に始めたのは美大受験のための予備校でした。でも、せっかくみんなで絵を描く場所なのに受験だけが目的なのはつまらないと思うようになって、だんだん発想が広がっていったんです。それに、いろんな個性を持った子どもたちと接する中で考えさせられることもありました。それで、アートを通しての学びや子どもたちの居場所づくりへと、目指すものが変わっていったんです」

 今でも、吉田田さんにとってアートは重要な要素。例えばトーキョーコーヒーで最初に行ったのは、不登校に悩む親子らが集まっての話し合い――ではなく、古民家のリフォームだった。

「奈良の山中の、自然豊かなところでね。は? なんで? って思いますよね(笑)。でもね、アートというか、みんなで一緒に手を動かして何かを作るってすごくいい時間なんですよ。大人にとっても、ひいては子どもたちにとっても」

 作業を通じて協力する中で自然と話をするようになる、信頼関係が生まれてくる。仲間になる。居場所になる。それがトーキョーコーヒーなのだと吉田田さんは確信的にほほ笑む。

 本書には、その具体的な活動の様子が写真入りで紹介されている。イラストも豊富で親しみやすい。そして最大の特徴は、著書でありながら“トークライブ”という形式をとっていることだ。わかりやすく軽妙な語り口は、これまで全国の保護者や教育関係者を対象に講演をしてきた吉田田さんならでは。そのうえ、ページ下部には“副音声”として、一緒に活動する仲間たちからの補足コメント(ツッコミ)まで入る。

吉田田タカシさん

「とにかく手に取りやすい本を! という思いで作りました。そもそもトーキョーコーヒーって“登校拒否”のアナグラムなんです。そういう遊び心は持ち続けていたい。この本も、あまり深く考えずに読んでみてほしいと思っています。僕はなにも、今の教育を否定したいわけじゃない。でも行き詰まってることも事実ですよね。だったら、自分たちがより生きやすい社会になるような行動をしてみようよってことなんです」

「では、本書によって吉田田さんの存在や考えが、さらに知られるようになるといいですね」と言うと、ちょっと複雑な顔になった。

「僕自身が注目されるより、トーキョーコーヒーがもっと広がって、当たり前の社会になって、『これって誰が始めたの?』って言われたい。いつか僕の名前が消えるほうが、デザイナーとしては本望なんです(笑)」

よしだだたかし/兵庫県出身、奈良県在住。大阪芸術大学在学中の1998年に「アトリエe.f.t.」開校。以来、教育者、デザイナーとして活動。2022年「トーキョーコーヒー」を設立。またロックバンド「DOBERMAN」のボーカルでもある。