警察は改めて和利くんが誘拐されたものとみて本格的に捜査を開始。聞き込みにより、彼の友人から「4月2日の夜に和利くんが25歳くらいの男と一緒に若松湯から出てくるのを見た」という重要な目撃証言を得る。警察は俄然色めき立った。が、それ以上の情報が何もなかったことから容疑者の特定には至らず、捜査は早くも行き詰まってしまう。

 事態が急変するのは行方不明発覚から1週間後の4月9日。この日、精神科・神経科専門病院の都立桜ヶ丘保養院(現・桜ヶ丘記念病院。東京都多摩市)の医師から警察に仰天の電話が入る。何でも、入院患者の自宅から遺体が見つかったというのだ。

「子供を殴った。血が出た。鉈で切った。ノコギリで…」

 医師の話によれば、プロの囲碁棋士である林有太郎(1900-1983)の長男・邦太郎(当時26歳)が3日前の6日から入院していたのだが、診療中に「子供を殴った。血が出た。鉈で切った。ノコギリで切った。ホルマリンに漬けた。かわいいかわいい」と口走ったそうだ。

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 意味不明ながら、どこか不穏なものを感じた医師は9日朝に中野区の邦太郎宅を訪問。両親と一緒に彼の自室4畳半を確認したところ、畳の上に大量の血痕が見つかり、床の一部が異様に盛り上がっていることに気づく。そこで医師が畳をはがし床下を調べると、なんと金魚鉢と水槽にバラバラになった少年の遺体が詰め込まれていた。

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