「やだやだ! もう帰る!」

 母親に手を引かれ、沈んだ表情で歩いていた子どもが突如座り込み、泣きじゃくり始める。母親は「大丈夫だよ、頑張ろう。だって――」と声をかけながら息子の顔をのぞき込み……

 顔に張り付いた凍えるような笑顔の奥底から、押し殺した苛立ちをにじませて母親はこう続けた。

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「ちゃんとできない子はね、お猿さんと一緒なんだよ?」

『だって私は空っぽだから お受験編』

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伸び続ける「お受験」市場

 高まる教育熱にうかされるように、日本の教育産業の市場規模は3兆円に迫る勢いで伸び続けている。首都近郊では、高校・大学受験のみならず、中学や小学校の受験までもが注目を集めている。人気私立の小学校ともなると、倍率は10倍を超えることも珍しくない。そうなると必然、人気校に合格するために大量の札束が積まれることになる。

 文部科学省の調査によると子どもを私立小学校に通わせている世帯の半数以上の年収が1200万円を超えているという。一般的には高所得と言われる世帯であるが、一部の私立小学校に通わせている世帯の年収としては「低所得」と言われてしまうのかもしれない。

 なぜなら、<(有名私立小学校名) 年収>とネットで検索すると「最低でも年収2000万」「1000万は底辺」などといった記述も目立ってくるのである。

 必然的に、そういった学校を目指す場合にかかる費用も相当な金額になる。受験対策の塾の月謝は10万円以上、学校ごとの特別講座や模試で追加の授業料を払い、塾に通うために必要な親子の服(!)も仕立てのいいものを用意しなければならない。