古川琴音は、映画『花緑青が明ける日に』(全国公開中)で、初めてアニメの主人公を演じる。古川に声をかけたのは、メガホンをとる四宮義俊監督本人だった。

「普段のお芝居でも『声でだれが演じているかわかるよね』と言われることが多かったので、声のお仕事に挑戦してみたいとは思っていたのですが……。四宮監督は『偶然と想像』(21年)を観て、キャスティングしてくださったらしくて、その理由が“地球の裏側の人に語りかけているような気がした”ということだったそうなんです」

古川琴音 撮影=深野未季/文藝春秋

変わりゆく伝統をポジティブに捉える発想

 この『花緑青が明ける日に』は、日本画を中心に幅広く創作活動を行う四宮義俊の、初の長編アニメーション監督作品でもある。

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「もともとアニメを観るのが大好きで、特に絵に惹かれて観はじめる作品が多いんです。ですから、今回監督が描かれたデザイン画やキャラクターの設定画を拝見したときに、絶対に観にいきたいと思う作品だと感じました」

 物語はある地方都市を舞台に、町の再開発によって、立ち退きの強制執行が迫る創業330年の花火工場をめぐる青春映画である。

「私は『ふるさと』『地元』という言葉は、その土地で暮らしている人間の営みも含めたものだと思うので、その伝統が消えるのは悲しいことだと考えていたんです。けれど、四宮監督は『その変化も新しい文化が生まれるきっかけになる』とポジティブに捉えていらっしゃって、その発想に新鮮な驚きを感じました」

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 時代とともにふるさとが変わりつつあるなか、花火工場がなくなることを仕方ないと感じている兄と、幻の花火・シュハリづくりに執念を燃やす弟。古川が演じるカオルは、そんな2人を、幼なじみとして姉のように見守る存在。地元を離れ東京の大学でプロジェクション・マッピングを学ぶカオルが帰郷したところから物語は展開していく。

「カオルは新しいことを始めることで自分の人生を切り開こうとしているけれど、花火が好きなことは変わっていない。町に残ったほかの2人に対して、カオルだけどこか引け目があって、宙ぶらりん。そんな複雑な思いを抱えている役柄なんだ、ということに監督とお話ししていて、気づいたんです」