自然のままキャラの心拍を表現する

 とはいえ、古川は「難しかったですね」と語る。自ら「もう1日収録させてください」と懇願したという。

「決められた時間内でセリフを言うことも初めてだったし、技術的なことに囚われすぎて、自分の思ったようなカオルにならなかったんです」

 なぜ、こんなに違和感を覚えるのだろう……その迷いを救ったのは、四宮監督の言葉だった。

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「『自然なまま、キャラクターの心拍を表現してほしい』とおっしゃったんですね。なので、いつものお芝居のように、カオルの動きにあわせて、身体に力を入れてみました。高いところから飛び降りたり、走ったりという、身体の動きが大きいシーンから、カオルの心拍に自分の言葉が合わせられるようになっていったんです。いつものお芝居では、会話している相手の呼吸や表情、動作などで自然とリズムをとっていたということを知りました。だからそれがわかった時、急に見えてきました」

 カオルという役をとらえたことは、古川にとって演技の身体性を改めて考えるきっかけにもなったという。

「カオルが成長していくさまを演じるなかで、私も新しい気づきを得ることができました。そして、この映画に込められたメッセージを観る方に伝える“語りかけ”ができたんじゃないかな、と思います」

取材実施日=2025年3月21日

ふるかわ・ことね 1996年、神奈川県生まれ。第71回ベルリン国際映画祭の銀熊賞受賞作『偶然と想像』(21年)の第一話で主演を務め、話題となる。2026年は本作のほか映画『ほどなく、お別れです』(2月6日公開)、ドラマ『魯山人のかまど』(春放送予定)などの出演作が控える。

INTRODUCTION & STORY

画家としての活動の一方、新海誠監督の『君の名は。』(回想シーン)、片渕須直監督の『この世界の片隅に』(水彩画)やCM・ミュージックビデオなどにも携わる四宮義俊。その初の長編アニメーション監督作品となる本作は、緑豊かな森に恵まれた二浦市という再開発の波が押し寄せる地方都市が舞台だ。花火工場・帯刀煙火店の次男・敬太郎(萩原利久)は、幻の花火・シュハリづくりに没頭する。翌日に煙火店の取り壊しが強制執行される日、過去に起きたある事件をきっかけに地元を離れていたカオル(古川琴音)が帯刀家を訪れた。そして、失われたシュハリの秘密に迫るため、驚きの計画を企てる。その鍵を握るのは、もう使われなくなった花火の原料「花緑青」だった。

 

STAFF & CAST

原作・脚本・監督:四宮義俊/声の出演:萩原利久、古川琴音、入野自由、岡部たかし/2025年/日本・フランス/配給:アスミック・エース/©2025 A NEW DAWN Film Partners

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