韓国の巨匠パク・チャヌクと大人気俳優イ・ビョンホンが組む『しあわせな選択』は、現代人の心に突き刺さるダークコメディ。

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 25年もひとつの製紙会社に勤務し、愛しのマイホームで家族と幸せな生活を築いてきた中年男性マンス(イ・ビョンホン)。しかし、会社が米国企業に買収されてしまい、人生が大きく変わる。

 ほかの職種を考えられない彼は、同業他社に絞って転職活動を開始。「3ヶ月以内に次を見つける」と目標を掲げるも、同じ立場のライバルは多く、思ったように進まない。子供の習いごとをあきらめるなどして生活費を切り詰め、専業主婦だった妻も働きに出始めて、「一家の大黒柱」「家族を守るたくましい夫、父」としてのプライドは、傷ついていくばかり。自分にかけるプレッシャーがどんどん高まる中、ついにマンスは、究極の行動に出るのだった。

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 1997年に出版されたドナルド・E・ウェストレイクによる原作小説『斧』は、コスタ=ガヴラス監督によって2005年に一度映画化されている。パク監督がリメイクの構想を明かしたのは、2009年のこと。それから16年を経て完成したこの映画は、オスカー候補入りこそ逃したものの、トロント映画祭で観客賞(国際映画部門)を受賞したほか、数多くの賞にノミネートされた。

 その話題作が、日本でもついに公開となる。この映画にかける思い、また久々にお互いと組んだ感想などを、ロサンゼルスを訪れていたパク監督とイ氏に聞いた。

「みんなが良い給料を得られて満足」という国は過去15年間どこにもなかった

――近年、企業買収や業績不振などを理由に、早期退職や転職を考えなければならなくなった人は、日本でも増えています。この映画は実現に長い時間がかかりましたが、むしろタイムリーになったとも思いますか?

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パク・チャヌク そうですね、ただ、正しいタイミングが訪れるのを待っていたわけではありません。その間、私はずっとこの映画を作りたいと思い続けてきました。そもそも、過去15年間、景気がとても良くてみんなが良い給料を得られて満足、などという国は、世界のどこにもなかったですよね? それは、悲しい現実です。

 だから、これはいつ語ったとしても共感できる話であるに違いないと、私は信じてきたのです。この企画をあきらめなかったのは、それが理由です。

――絶望的になったマンスは、とんでもないことを思いつき、実際に行動に移します。そこに笑いがあります。爆発的にヒットした『イカゲーム』でイ・ビョンホンさんを知った欧米の一般観客は、この映画であなたのコメディの才能を見て、驚きを感じるのではないでしょうか。